韓ドラとソウルホテルと。

韓国ドラマのレビューブログ(基本的にネタバレ)。ときどき昔話。

ラブレイン

yoonaの ココがみどころ!

■「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督、お得意の初恋もの。

■初恋がかなわなかった親世代(1970年代)のあれこれが、子どもたちの世代(2010年代)に迷惑をかける話。まあ、いつものユン・ソクホ節。

チャン・グンソクとユナ(少女時代)初共演、親世代と子世代の二役を演じる。

■グンちゃん、意外といい。

■海外ロケ地は北海道。

     

 (視聴時期:2012年8月ごろ)

1970年代の親世代の話が4話の途中まで続きますが、

とてつもなくのんびりした、というかまだろっこしい展開です。

携帯のない時代ってそんなだったかもしれません。

5話の途中で2012年に切り替わるんですが、

本当に別の話のように、会話のテンポも画面の作りかたも変わりました。

服装や話しかたが違うのは当然なんですけど、画面の明るさも違いました。

1970年当時のほこりっぽい町が、一気に北海道のパウダースノーに変わったということもありますけど。

グンソク君とユナちゃんもがらっと変わりました。

2012年が彼らの等身大だとすれば、1970年代は本当に別人を演じていたように見えます。

 

このドラマも小道具がいろいろ効いています。

ソ・イノ(グンちゃん)が盗み見たのが日記でしたが、ソ・ジュン(グンちゃん)が見たのは携帯の画面。

二人がぶつかったことで、それを見ることになりましたね。

 

腕時計は「二人の時を止めた」のか「30年先まで時間をすすめたのか」、大きなキーになる小道具です。

 

1970年のソウルにはまだ夜間通行禁止というのがあって、思想的にも厳しい時代だったようです。

イ・ビョンホン主演「夏物語」と同じ時代背景ですね。

そのころ大学に行かれたのは裕福な家か、優秀な学生だけだったのでしょう。

大学内で号令と同時に国旗を掲揚するシーンもありました。

 

携帯電話のない時代ですから、約束したり会うのは大変だった。

確かめることができないから、会ったときのほんの一言や何気ないしぐさについて、

考える時間がたくさんあったんですね。

それで誤解も生むし、憶測も広がる。

 

ある愛の詩」という映画がひとつのカギになっていますが、

日本ではこの映画の名台詞は「愛とは決して“後悔しないこと”」だったと思います。

このドラマでは「愛とは決して“謝らないこと”」になっていて、

後悔しないと謝らないでは、ずいぶんイメージが違います。

 

謝らないからこそ、ソ・イノはキム・ユニ(ユナ)ともう一度会えると信じてしまいましたし、

後悔しない、と思えばもう一歩進めたのかなとも思います。

そうしたら運命変わっていたかも。

ユニの「誰も傷つけたくない」と思いう性格は、後々にもいろんな後を残します。

 

ユン・ソクホ監督はそういうことを全部「美しい思い出」として残しました。

たぶんそういう考えが、次の世代に遺恨を残すことになるのでしょう。

 

それは「冬ソナ」でもそうでした。

過去の四季シリーズでも見たシーンがいろいろあります。

 

画面の風景はどこまでも美しいです。

紅葉の素晴らしさや日光の角度まで、十分に計算されて撮影されたのでしょう。

人物たちの衣装の色までが、計算しつくされています。

 

今のミニシリーズは1つのシーズンで撮りきることが多いので、

あまり季節が移らないのですが、

このドラマは贅沢に季節を変えて撮影されています。

              

正直4話まではちょっと忍耐がいるかなあ?という展開でしたが、

あのまま兵役に行って終わりかなあと思っていたところに、

逮捕という展開があったのがちょっと意外でした。

 

現代になって、グンソク君は目つきも態度も全然違う男として登場して、

やっぱりさすがだなあと思いました。

美男ですね」のテギョンと、「ファン・ジニ」のウノの両方をやった俳優と思えば不思議ではないんですが。

 

突っ込むところはいろいろありますね~。

やっぱり「別れ」にはどっちかを病気にして外国へやったわね、とか。

富良野にいくジュンがどうして旭川にいるのかとか。

旭川から車で行ったのかな?

韓国からなら一度羽田へきてそれから新千歳じゃないのかな~?

パウダースノーを見るために山に入った二人、日の出前の山の中がずいぶん明るいかな~?とか。

 

ジュンのスポンサーの宝石会社の社長が、「シークレットガーデン」の常務でした。

まったく同じキャラで笑えました。

 

5話ではまだ二人の親が30年前のイノとユニだということは明かされていませんが、

見ているほうは分かっているので、

ジュンの頑固なところはイノの血筋かなあと思いますね。

 

ところで日本では「雨」やいやなもの、鬱陶しい、というイメージですが、

韓国では「雨」は良いというかロマンチックなイメージだそうです。

雨が降ればマッコリとジョンで一杯、という言葉もありますね。

このドラマのタイトルもそういう背景があるのでしょうね。

「愛の雨=ラブレイン=サラン ピ」ですね。

 

ユン・ソクホ監督は「春のワルツ」以後、コメディ作品を作りたいと思っていたそうですが、

それはちょっとトレンドに合わないと思ったそうで、

それはアイドルを使ったラブコメがことごとく低視聴率に終わっていたせいかもしれません。

で、大人の不倫を取り上げたかったけど、

男のほうの言い分を作るのが難しかったと。

・・・で、出来上がったのが「ラブレイン」なのだそうです。

なるほど、不倫の言い訳を女性側から考えるのは簡単なのですね。

ユン監督ですから、「遊びだった」では済まないわけですし、

いい年をした男性が純愛を貫くには、つらい別れと芸術家らしい純粋さがないと。

だから、ソ・イノはサラリーマンではなく画家なんでしょうね。

 

6話から11話はフツーにラブコメらしく、

会えば喧嘩している2人がくっつくまでの話です。

このドラマで、ここが一番和むかな?

前半はまだろっこしく、後半はじめっとした話ですから。

 

イナからジュンへ、ガラッと変わったグンソク君がやっぱりすごいと思います。

ここでは、「メリは外泊中」のムギョルっぽいかわいさもあるし、

両親の問題では「ホンギルドン」のチャンフィっぽい影のあるところも見せます。

 

6話では中年になったイナ(チャン・ジニョン)とユニ(イ・ミスク)も登場。

見ているこっちには、ああ、2人の子供たちが・・・ということを先にわからせてくれます。

 

大人になってからの俳優さんはグンソク君とユナちゃんには似てないので、

違和感あるかなあと思ったのですが、この辺はさすが俳優さんがうまい。

2人の学生時代のテンションをそのまま引き継いでいて、

見た目は変わっても性格って変わらないのよね~と本当に思わせてくれます。

 

女性が見た目で変わってないというのは大事なポイントです。

男性はドンウク(キム・シフ)みたいにどこのおじさんかと思うほど変わっちゃう人がいますが、

だれからもあれが昔の彼女と気づかれないと、こういう物語は成り立ちません。

 

イ・ミスクさんは、どっちかっていうとジュンの母親のような強い役が多かったように思うのですが、ああこの人はあのユニの30年後なんだって思わせてくれます。

くったくのないハナの明るさもとてもいいです。

 

ユン・ソクホシリーズっていつもそうなんですが、

そこで終わりにすればいいじゃん、って思うところで、

また偶然会ったり、しつこく戻ったり、追いかけたりするんですよね。

あきらめないというか執念深いというか。

 

そういうつもりはないのに、つい言ってしまうところとか、足が向いてしまうところ。

気持ちとは裏腹に相手に対する関心がすごくなっていて、

理性では抑えられなくなる「恋の始まり」みたいなところをよくついています。

監督の純愛に対する美学があるんですかね~?

 

ジュンはユン作品の中では、プレイボーイらしいプレイボーイです。

「シークレットガーデン」のジュウォンとなんとなく似ていますが、恋愛はジュンのほうが上手のようです。

 

「冬ソナ」もそうでしたが、周囲の友人たちの設定がすごくいいですね。

特に現代のイ・ソノは、どこまでもやさしい性格で、「春のワルツ」のフィリップを思い出します。

 

いろいろ見ていると、過去に見たドラマのどっかで見たようなシーンが多いのですが、

よほど面白くつなげない限り、そこで奇をてらうと、

ぎくしゃくした流れになってしまうかも。

セリフは韓ドラにしては少ないと思うのですが、

相手(見ているこっち)にハッとさせるものが多いです。

 

ずっと髪を上げていたハナが、

ジュンに気持ちを伝えようとするシーンから髪を下げるんですよね。

これも演出と思いますけど、それだけでガラッと雰囲気が変わるので驚きました。

 

それにしても本当に背景と人物の服の色とか配置がとてもきれい。

ソ・イノ画伯の描いている絵の構成と似ていますね。

 

キム・ユニ、ハナ母娘の職業がガーデナーというのも、

長い間丹精込めて丁寧にという職業に通じる性格が表れているように思います。

ユン監督作品では男性はたいてい芸術的な仕事をしていて、

女性は手先が細かい仕事についていますね。

 

さて、会えば言い合いだった2人がどうやら気持ちを伝えあったところで、

親の問題が浮上。

ジュンがまず親同士が初恋の相手だったということを知ってしまいます。

 

これ、ジュンとハナのことが先だったらどうなるのかなあと思いましたが、

それでは、親たちの美しい再会は描かれませんでしたからね~。

ま、不倫と言っても、イナは離婚していますし、ユニは死別ですから、

不倫というほどの問題はないんですけど、

ジュンとハナが兄妹になっちゃう・・・・と悩む前に、

一緒に結婚しちゃおうとかいう能天気な展開は…考えなかったんでしょうね、ユン監督は。

 

法律上はダメなのかな。

両方に子供ができると、なんか面倒になりますよね。

それで、イナはどうしてヘジョンと結婚しちゃったんだろう?と思っていたんですが、

その辺はくどくど語られず、「できちゃった婚」だということがサラッと出てきました。

ジュンが自分にそっくりで言い逃れできなかったのかも。

 

このドラマのごたごたは、やっぱりイナがまいた種だったんだ・・・。

 

ジュンがハナがユニの娘と知ってから、当事者みんなが知るまでの不穏な場面が16話まで。

最初にジュンが知り、イナが気づき、ハナが知ってそれぞれにハッピーだった空気がどんよりしてくるところですね。

 

でも、ジュンのほうがどうしてハナを好きになったかがわかりやすいかな。その辺の細かい気持ちの表現をするのは、ユン監督のほうが上手かもしれません。

ハナの屈託のなさもいい。

中年カップルも、もうさえぎるものはないし、突っ走ってる感じがします。

 

2組は偶然(?)同じ海へ向かいます。

30年前の2人も、写生旅行の後、この海へ行ったのかな?

父親の思い出の場所として刷り込まれているジュンもここへ来ます。

 

2組のカップルが一晩どうしたのか、やっぱりスルーされてますけど~。

でもどうしていつも最初の夜が変な宿なんですかね??

 

母親の幸せ(というか初恋が成就するというロマンチックな夢)を願っていたハナには、現実は厳しすぎました。

そのせいで自分の初恋は壊れちゃうわけですから。

ジュンも、父親のせいで幸せな家族に恵まれなかったことから、

またその父親のせいで自分の恋が壊されることに我慢ならない。

 

でもイナ、芸術家だから~。

非凡な人とはまた違うのかなあとも思っていましたが、

結局ユニとの結婚をあきらめようとする。

 

誰かが不幸にならなければ自分の恋がかなわないという状況が、

みんなを追い込んでいきますね。

まさに「葛藤!」の繰り返し。

 

・・・と「葛藤」という字、「藤(ふじ)」なの?と思ってちょっと調べました。

どちらも「つる」が伸びて、それが絡まるともつれて大変だからということからきてるんだそうです。

 

へジョンが一番、学生時代と中年時代が似てますね。

一番違うのは「ドンウク」かな。別人のようです。

あ、でも私の学生時代の友人に、ジャニーズ並みにかわいかったのに、

今ではすっかり「ドンウク」な人がいます。ありえますね。

だとするとソノの30年後も・・・・。

 

あとから知った話ですが、

グンソク君の役は、最初BIGBANGのTOPにオファーがあったそうですが、

彼だったら全然違う印象になっていたでしょうね。

でも結果的にはグンソク君でよかったような。

二役ということもありますし、

コメディタッチからシリアスまでいろんな表情を見せてくれますが、

グンソク君はそれが本当にわかりやすい。

 

ハナ役は最後までキャスティングが難航していて、

制作発表ぎりぎりまで名前が出てこなかったんですが、

ユン監督の言う清楚な感じにユナちゃんはぴったりと思います。

20代の女優では、ムン・グニョンとかパク・シネとか演技のうまい女優さんはいますが、

二人ともグンソク君と共演したばかりですし。

何より、イナ(ジュン)がどんどんユニ(ハナ)を好きになってしまうことが、

見ているこちらに納得できないとドラマが成り立たないわけですし、

そういう意味ではユナちゃんかわいくて、とっても良かった。

 

あと・・・。

日本で売れる韓国ドラマは、コメディと史劇だそうです。

でも韓国では、ドラマを見る年齢層が広いので、

若い層と高齢層の話を両方出さないと視聴率が取れないとか。

アイドルだけを出したドラマは苦戦してます。

それで、そういうドラマが多いんですね。

 

17話からはとうとうへジョンにもジュンとハナのことがばれて、また逆上。

まあ、このオンマは自分が気に入らない場合は徹底抗戦っていう感じですけど、

史上最悪の相手だったわけですしね、ハナは。

 

もっとも、イナはヘジョンをちょっとでも愛していたことがあったのかな?と思うと気の毒な人ではあります。

いいお家の子同士のでき婚だから、

当時はとにかく結婚しなくちゃって感じもあったでしょうし。

 

へジョンの見た目が怖いから、あまり同情できないんですけど、

なんとなくかわいそうですかね。

で、息子が自分に似てるとか、娘とかならよかったのかもしれないけど、

旦那の若いときに激似ですもの。

でもジュンの性格の強いところは母親似ですかね。

 

それにしてもヘジョンは現れるたびに誰からも「何しに来たんだ」と言われてます。

つらいですね~。

まあでも親は親、子は子でそれなりにやっていこうという矢先に、今度はユニの病気。

最初にジュンが気づき、そういう母親のもとからハナを引き離せなくなり、

悩みが深くなります。

 

ユニには頼れる人、イナが必要であるとジュンは理性的に理解し、それで自分たちの未来はなくなると感情的には納得できていない。

ユニを父親に任せて、ハナと外国に行こうっていう選択は良かったな~と思うんですよ。

このドラマ、そこで終わってもよかったかな。

 

それますが、そこのシーンは水辺で夕焼けでとってもきれいでした。

車のコマーシャルみたいなシーンでしたが、

ここで終わっちゃうとあまりに「冬ソナ」に似すぎかな?

 

で、そのあとがありましたね。1年後。

1年後があればなあというドラマはこれまでにもいろいろありましたが、

こうやって見ちゃうと、なくてもよかったかな~と思います。

 

ユニの目がどうなるかわからないけど、ユニにはイナが寄り添い、

ジュンとハナは新天地で暮らす。

それでいいじゃない~と思うのですけど。

 

ドラマはヘジョンとの関係までちゃんとオチを付けました。

1年後にはまあまあの関係になっているヘジョンとハナ。

結局、イナとユニは、「お前たちは幸せになって」といって外国に行ったまま、

ジュンとハナに「結婚しなさい」と背中を押したのはヘジョンでしたね~。

そんなにもオンマって大事なのですね。

 

ユニを追ってアメリカに行くイナは、仕事を捨てて行きましたが、

「何も惜しいものはない」とかなんとか言っちゃって、

彼の授業を取っていた学生はどうなるんでしょう?

まあ、絵は向こうでも描けますけどね。

 

ジュンはニューヨークのオフィスからチーフフォトグラファーとして迎えたいという話を蹴りました。

ハナはそのこと知らないような気がするんですけど、

単なるサラリーマンでも海外転勤をそう簡単には断れないのに、

ましてフォトグラファーがニューヨークに呼ばれるというチャンスをどうして・・・、

と思うのですが、よけいなお世話なんでしょうか?

ハナが仕事をすることへの理解は示してるようですけど。

 

こんなことを考えないとならないから、「1年後」は余計だったように思うのです。

それに1年後のジュンはデレデレでした。

ちょっと見てらんない~と思うくらいに。

 

ただしグンソク君はデレデレの顔がなかなか良いです。

私はあまり笑ってない顔がすきだったりしますが、

グンソク君に関しては、これでもかっていうほど笑ってる顔がけっこう好きです。

もちろん、グラビア用のカメラ目線じゃなく、

これ、素なのか演技なのかって区別がつかないくらいの、笑顔。

もうほんとに「いやな奴」の時とは180度違いますね。

 

ラストの結婚式の衣装のシーンもとっても2人ともかわいかった。

ダイヤモンドスノーをスクリーンに映す演出は相変わらずやりすぎな感じもしますし、

イナがユニにあげた「モッコリ」が傘のモチーフだっていうのも、

どうなのかな~と思いますけど、

ユン・ソクホだからな~ということで、よしとしますか。

 

全体的にはやっぱりグンソク君の演技力に負ったところが大きいドラマだと思いました。

まだそこにこだわるか、っていうくらい同じようなやり取りが繰り返されるのですけど、

グンソク君がうまかったから引っ張れたかも。

いつものように新人俳優だけだったら、結構つらかったんじゃないかと。

 

でも、ハッピーエンドだからよかったんじゃないでしょうか?

 

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【作品メモ】