韓ドラとソウルホテルと。

韓国ドラマのレビューブログ(基本的にネタバレ)。ときどき昔話。

空港に行く道

yoonaのココがみどころ!

■大人のメロドラマ

■ちょっと不倫を美化しています

■ロケ地、衣装、インテリア、いろいろ素敵

 

土日に放送していた「空港へ行く道」、

このところ史劇続きだったので、ちょっとホッとしました。

週末の放送というのが続きをどんどん見られなくてもどかしかったけれど、

このドラマもとてももどかしい展開だったので、ちょうどよかったかも。

 

結婚していて子どももいる男女の話なので、言ってしまえば「不倫」なのですが、

ドロドロの不倫ものと言えないところがこの作品のミソ。

不倫ドラマって、鬱屈した日常とか直面したくないこととか何か不満があるところへ、

思いがけない出会いがあって、恋(らしきもの)に堕ちるという展開と思うのですが、

そう捉えると、このドラマの二人もそうかな~と思ったりします。

 

ただ、このドラマで出会う二人は、すごくまじめでまっすぐなので、

伴侶以外の相手に好意を持つことを悪いことと思ってしまう。

その葛藤がまどろっこしいです。

このドラマの設定から見ると、もう最初の数回で、

これは二人ともさっさと離婚して、この相手と再婚したほうがいいよ~、と思うくらい、

お互いの連れ合いが「やなやつ」なんです。

 

子はかすがい、と言いますが、まさに子どものために一緒にいるような感じ。

 

主人公の二人は、キム・ハヌル(チェ・スア役)さんとイ・サンユン(ソ・ドゥ役)さんが演じています。

ドラマを見終わった今となっては、

二人ともチェ・スアとソ・ドゥと呼んだ方がしっくりくるぐらい。

 

ドラマ中、大した事件は起きません。

二人の連れ合いが変なことが事件なことくらい。

そもそもチェ・スアとソ・ドゥはどうしてこの相手と結婚したのか疑問に思うくらいです。

 

彼らを取り巻く人たちも、きわめて大人の振る舞いで、

いじわるをしたり、何かをたくらんだりという韓ドラ的な人格の人はいません。

そのかわり、一人ひとりがきちんと性格付けされていて、

ああ、こういう人なら、こういう場面ではこういう言動をするんだろうな、ということが理解できます。

 

チェ・スアのジコチューな旦那パク機長(シン・ソンロク)も、ソ・ドゥの隠し事だらけの奥さんヘウォン(チャン・ヒジン)も、

こういう育ちだからこうなるんだ~、ということがわかりやすい。

 

チェ・スアとソ・ドゥは、結婚していながら、

(しかも彼らのまじめな性格からしたら、慎重に相手を選んだはず)

別の人を好きになるということが、自分では信じられなかったはず。

 

そういうところから始まる「不倫」ドラマです。

 

別の見方をすると、このドラマの主役以外の登場人物たちは、かなり自己主張が強い。

それをチェ・スアとソ・ドゥはそれぞれに受け止めていかなければならないところが、

このドラマが「大人のドラマ」と言われる所以かもと思いました。

 

「空港へ行く道」というタイトルが素敵ですね。

スアの職業はCAで、ソ・ドゥとは空港で出会います。

物語の中に何度となく空港が出てきますし、

スアの携帯では、ソ・ドゥの名前は「空港」と登録されています。

 

イ・サンユンさんはすごく性格の良い頭のいい人の役が多くて、スタイルも抜群だし、

このドラマを見たらサンユンさんに惚れる人がたくさん出ると思います~。

 

スアの旦那のシン・ソンロクさんも長身で、

女優陣もすごく背が高いので、高層ドラマです~(^_^;)

 

物語としては、特に大きな事件も起きない、病気もないドラマなんですが、

要所要所で突っ込みたいところはいろいろありました。

それはドラマが進行する中で答えが見つかったり解決したりするんですけれどね。

 

スアとドゥはごくごくまっとうな、というか真面目なタイプです。

およそ自分が不倫をするとは考えてもみないタイプ。

双方の子どもが海外に留学した先でルームメイトになることが二人の接点になるのですが、

ドゥの娘アニーが事故で亡くなるまでは出会わない。

会うことになった理由は子どもでしたが、会うことになった場所(その後も何回も会う場所になる)は空港です。

 

これがドラマのタイトルにもなっている「空港」なんですけれど、

スアにとっては空港イコール働く場所であり、ドゥとの場所なんですね。

パイロットの夫を持っているんですから、空港はむしろ夫に近い感じがしますが、

スアはドゥのことをスマホの電話帳に「空港」と登録します。

出会った場所であると同時に、ドゥはスアにとって、生きていくために必要な(働く)場所になっていく。

 

ドゥはスアをスマホに「漢江の川岸」と登録します。

こういうやり取りがすごくうらやましいというか、素敵でしたね~。

夫のことはただ名前で登録してあるし、スアの夫は妻の名前は「ヒョウンのオンマ(娘の母)」ですよ。

 

お互いに既婚であることから、好意をもちながら、

二人はものすごくものすごく自制します。

テレビのこちら側から見ていれば、二人とも、とっとと別れろと思うくらい、

ひどい相手と結婚しているのに、です。

スアとドゥは一度結んだ関係を簡単に解くような人たちではないんですよね。

 

でも二人の結婚相手は違う。

愛情以外の目的をもって、相手を選んでいる。

ま、みんながみんな好きになった相手と結婚しているわけじゃないかもしれませんが、

パク機長(スアの夫)とヘウォン(ドゥの妻)の理由は、ひどい。

二人とも自分のやりたい仕事のため、生活のためということでは一緒です。

 

このドラマは、最初は大人の美しい不倫の話と思っていたのですが、

最後まで見ると、一人一人が自分の幸せについて真剣に考えるとこうなる、という話だったと思います。

 

スアとドゥがお互い離婚して、さらに向き合うまでが長かった。

ヘウォンの連れ子だったアニーが交通事故で亡くなりますが、

(少なからずスアもその事故にからんでいて)

母であるヘウォンがたいして悲しむ様子もなく、なかったことにしようとさえすることに疑問を持ち始めるドゥ。

ドゥは自分の子ではないけれども、自分の子供以上にアニーをかわいがっていましたから、

ヘウォンの態度に怒るんですけれど、

ドゥはもともとものすごくいい人なので、そのヘウォンのことさえも理解しようとする。

もう、ドゥが良い人過ぎて、もどかしいほどでした。

ドゥには韓国に帰らないと言っていたアニーが、

母親には帰りたいと言っていたことをドゥは知りませんから、よけいに。

 

一方、スアの娘ヒョウン(キム・ファニ)、は父親の方針で、海外にやられます。

父親がパイロット、母親がCAなので、家を空けることが多いため、

子どもは海外の学校にいたほうがいい、というもっともらしい、

でも、彼にとってだけ都合のいい理由で。

スアは娘と一緒にいられないこと、ことごとく夫に反対されて家の中が思うようにいかないことに不満を持っています。

けど、対立しない。

飛行機内における機長とCAという立場を、そのまま家庭に持ち込んでいるようにも見えます。

でもスアは、「何とかしたい」と思うだけで、離婚しようとまでは思っていないみたい。

 

ドゥもスアも、なんとかうまくやっていきたい、と考える人たちなんですね。

もちろん、子供もいますし、そう簡単ではないでしょうし。

ドゥのほうは子どもが実子ではないので、周囲もどうして子連れのヘウォン、

それも性格的にかなりきついと思われている彼女と結婚したのかいぶかる向きもありました。

ドゥがどうして結婚相手にヘウォンを選んだかは、結構謎でした。

ヘウォンはきれいな人だけど家庭的でもないし。

 

ドゥの実家は伝統家屋で、母親は飾り紐の工芸作家でもあり、

その母の元で働いていたヘウォンでしたので、母の助けになる人であれば、という気持ちもあったかも。

後になって、その母親のもとで働きたくて、そのために子ども(アニー)を利用したことがわかり、

ドゥも自分の人を見る目に自信を無くしたと思います。

まわり中がヘウォンを疑問視していたのに、ドゥだけが信じていたのが不思議なくらいです。

 

スアの夫は、スアの親友でもあるミジン(チェ・ヨジン)と結婚前に付き合っていた、という過去がありました。

過去だけじゃなく、彼には「現在」もいろいろあって、

高給取りでありながら気楽な生活を楽しみたいがために、妻を働かせて、

子どもを海外にやるような人です。

仕事は優秀かもしれないけれど、人としてどうなの?というパク機長の性格は、母親譲り。

自由な生活を奪われたくないから孫の面倒なんか見るのもいや、という母親は

韓ドラではちょっと珍しいですが、

それも、あれこれ夫に束縛されていた反動とわかると、

ああ、よくキャラ設定されているなあと思います。

 

スアとドゥが接近するのは、偶然じゃなくて必然なんですね。

ドゥが先に離婚し、離婚を迷うスアに、「離婚は自分の判断が間違っていたことを認めることだから大変」と言いますが、

二人とも、今の状況を何とかしよう、ほかの人を好きになるのはダメ、という観念からなかなか抜け出せない。

でもだんだん寄り添っていくんですが、その過程がドラマとして

ちょっとずつですけど、面白いところです。

二人で中学生のカップルみたいなルールを決めたりしてね。

自分の伴侶から心が離れていくにつれて、

お互いの気持ちが近づいていくのを感じているわけですが、

二人とも、その気持ちを自分の家庭が壊れていることを理由にしたくないので、葛藤します。

 

それはそれ、これはこれ、とけりをつけたい。

アニーは死んでいますが、ヘウォンの過去が明らかになるにつれて、

アニーの本当の気持ちを知りたいと、ドゥは思うようになります。

 

スアは、ヒョウンのことより先に自分のことを考えてしまう自分を責めたくなる。

娘をまた海外にやろうとする夫と距離を置こうとして、

ヒョウンを連れて済州島に引っ越したのも、

「ヒョウンのため」ということを自分に言い聞かせていますが、

そのヒョウンに「私が幸せになるにはどうすればいいか、自分で真剣に考えてみる」と言われて、

やっと自分の幸せ、ということを考えます。

結局、ヒョウンは母親のもとを離れて、

父親と祖母のいるニュージーランドに行くことを選択しますが、

そこがあっさりしていたので、小学生の子供にしてはちょっとどうかなと思いました。

(まあ、ドラマだから)

ヒョウンなりに、これだけ大人に振り回されれば、いろいろ考えるようになるかもしれませんしね。

 

というか、自分の幸せイコール娘の幸せでもないし、

娘の幸せが自分の幸せとは違うのではないか、それで当然だ、というところに行きつくんですね。

ドゥも、周囲がどうではなく、自分の幸せについて考えるようになります。

ドゥの母親が亡くなったとき、そばにいて小豆粥を与えてくれたのはスアと聞いた時から、

ドゥの気持ちは相当傾いていたかと思うと、

ああ、この韓国男もつくづく母親に弱いなあと思ったりしましたが。

 

ヘウォンの娘、アニーの本心も、最後のほうになってようやくドゥに伝わり、

最初から絡まっていた糸がほぐれたように思いました。

アニーの一言ひとことが、この物語の伏線になっていたようです。

 

スアの夫もドゥの妻も、すごく偏った変わった人ではありますが、

その性格がものすごく極端であるだけで、

悪い人とは言えないんじゃないかなあと思うようになりました。

素直じゃない、というところも共通している。

もしかしてこっちの二人のほうがうまくいくんじゃないかと思うくらいです。

 

スアの親友、ミジンはスアとパク機長とドゥを知っていて、

ドラマを動かすキーになる人物ですが、スアにパク機長の過去を言わなかったことで、

悪い女には見えない。

むしろ、自分たちの過去をばらして、二人の仲を裂くような悪さはないといったほうがいいかもしれません。

 

最後は空港で会う二人のシーンで終わります。

これから先はずっと平和、とは言い切れないと思いますが、

二人の選択は「空港で会う」ということでした。

空港は旅立つ場所でもあり、帰る場所でもある、ということでしょうか。

 

キム・ハヌルさんは「紳士の品格」以来のドラマだったそうですが、

大柄でスタイル抜群、肩のがっしりしたタイプにしては、いつもあれこれ迷うタイプの役が多いと思います。

 

相手役のイ・サンユンさんは、初めて見ましたが、

見るからに人が好さそうで、こんな不倫相手は逃してはいけないでしょう。

 

あと、このドラマのOSTがいいですね。

これといって名前を知っている歌手は入っていないのですが、

ドラマの余韻に浸れそう。

事件のないドラマなので、BGMとしてずっと聞いていたい感じです。

でも、もう、どこにも売ってない~。

 

それと、大人のドラマと銘打つだけあって、

ロケ地が素敵です。

特にドゥの仕事場が素敵。

階下で友人がカフェをやっていて、外階段を上って景色がいい。

これは実在しないセットだそうです。

漢江の雄大な流れもいいですし、後半の済州島の景色もいいです。

済州島の小さい家に1年くらい住みたいなあと思いました。風が強くて大変そうですが。

ドゥの実家の伝統家屋の中が意外にモダンだったりするのもいいです。

 

www.youtube.com

 

【作品メモ】

  • 韓国放送:2016年3月~ KBS
  • 演出:キム・チョルギュ 脚本:イ・スギョン
  • 16話