韓ドラとソウルホテルと。

韓国ドラマのレビューブログ(基本的にネタバレ)。ときどき昔話。

チャン・オクチョン

yoonaのココがみどころ!

■朝鮮王朝史上5本の指に入る悪女、チャン禧嬪(禧嬪張氏)が主役ということは、悪女としては描かれていない。

■チャン・オクチョンが宮廷のデザイナーという設定が大胆すぎる。

■韓国一の美人女優キム・テヒ、初の史劇。大きく見開いた瞳は相変わらず。

■ユ・アインの粛宗はなかなか翻弄されています。

 

 タイトルが「チャン・オクチョン」なので、

徹底的にチャン・オクチョン側から見た都合のいい歴史になっています。

これは恋敵であるチェ淑嬪側からのドラマ「トンイ」とは真逆で、

どっちを先に見たかで、歴史に対する見方が変わるかもしれません。

歴代、いろんな女優がいろんなドラマで演じてきたチャン禧嬪です。

 

チャン・オクチョン(キム・テヒ)は、宮廷のご婦人方の衣装を作る仕事をしています。平たくいうと「デザイナー」。

李氏朝鮮19代王は粛宗(ユ・アイン)の時代です。

「トンイ」ではチ・ジニさんが渋く演じた役です。

 

オクチョンはそこそこの身分の父親と奴婢の母親の間に生まれた子なので、

まあ後宮にはいるなんて思いもよらない身分なんですが、

才能があったので女官として宮殿に上がり、王様の衣装係になることで、出世の階段を駆け上がります。

朝鮮王朝史上、女官から王妃に成り上がったのは、チャン禧嬪一人だそうです。

 

チェ淑嬪はKARAのスンヨンちゃんですが、まあこの子の小憎たらしいこと!

でも、この子のやることは、オクチョンがやってきたこと、そのままなんですね。

人のものを強引に取ろうとすると、同じ目に遭うっていう宿命みたいなものを、

チェ淑嬪を通じて上手にドラマにしてたと思います。

 

キム・テヒさんは本当にきれいなので、絶世の美人といわれたチャンヒビンをやるには不足はなかったと思いますけど、

この人やっぱり表情が壊れないんですよね。

うれしくても怒っても悲しくても同じ表情っていうか。

それってもう、演技力以前に、あまり喜怒哀楽が顔に出ないタイプなんだろうな~って思います。

 

きれいすぎると、顔がぐちゃぐちゃにならない。いや、涙でぐちゃぐちゃになってもきれい。

ただ、テヒさんも、「天国の階段」の悪女が評判だっただけに、

何かをたくらんでいるときはコワい顔になります。

だから悪女としてのチャン禧嬪を演じていたほうが似合っていたかもしれません。

 

その一方で、あまり顔つきが変わらなそうだったユ・アイン君のいろんな表情の変化には引き込まれました。

粛宗って、即位したとき14歳くらいなんですよね。

そう考えると、なんか笑っちゃうけど、

(いや、チ・ジニさんのほうがもっとキビしいけど)

正式な王妃が2人、子どもを産んだ側室が2人、

粛宗の時代は、政権をあやつる派閥が何度も変わって、

そのたびに王権を誇示した時代ということだそうですけど、

彼は公私ともに全く気の休まらなそうな人生だったと思います。

そう思うと女に入れ込むのもしょうがないのか。

でもその女も、背後に派閥の勢力がどっちにつくかでいろいろなんですよね。

 

粛宗が年をとるごとに(王として偉くなるごとに?)衣装の色が明るい青からだんだん濃くなって、紺になり、最後にオクチョンに死を命ずるところでは黒になります。

年齢を表しているのかもしれませんが、彼の心がだんだん澄んだいろから黒くなっていくようにも見えて、そういう演出が良くできていました。

このドラマは、オクチョンの職業がデザイナーということもあり、衣装もとってもお金がかかっているそうで、女優陣の衣装も色がきれいでしたが、王様の衣装ほんとうにステキでした~。

特に、オクチョンの部屋にいるときは、上着をしどけなく脱いでたりして、くつろいでいるんですが、それがまた~(^^)v

 

これまでに見た中では、「ファン・ジニ」と同じくらい衣装がきれいでした。

オクチョンや髪飾りも、位が上がるごとにどんどん豪華になるんです。

 

王様の私室にオクチョンがいて、王様の服をゆったり着て、脇息(っていうのかな?韓国でも)にもたれかかっている構図の場面があるんですが、とってもきれいなんです。

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これは番組宣伝用の写真。

彼のすっきりした顔立ちも、韓服が似合いますよね。

史劇はやっぱり目元が二重の人より一重の人がきれいと思います。

 

王宮内の女の争いのドラマだけでなく、

粛宗が闘わなければならなかった政治的な争いも同時に進行していきます。

この辺は途中でネットで歴史を確認したりしながら見ていました。

「西人と南人」の争いから、「老論と少論」の争いになったり、いろいろ難しいんですよ。

李氏朝鮮時代は、文官の時代で、戦いは武力ではなく議論で、それはもう究極の口争いですから、見ていてもちょっと疲れるんですけど、

その争いにイニョン王妃(ホン・スヒョン)と二人の側室(オクチョンと淑嬪)が巻き込まれているのか、

女の争いに政治が振り回されているのか、

まあ、別々のことではなかったと思いますが、小賢しくないとこの王宮ではやっていけないわね、と思います。

 

いいところから来た姫(イニョン王妃)は鷹揚でも、お付きのものが賢ければいいというモノでもない。王様のご寵愛が第一。

オクチョンとトンイは普通ならとても側室になれるような身分ではないのですが、

両班である2人の王妃には子がなくて、身分の低い2人からは跡継ぎが生まれます。

深窓育ちよりたくましく、体も丈夫なんでしょうね。

 

チャンヒビン側の物語なので、粛宗はオクチョンとの愛を大事にしますが、

トンイにもちゃ~んと子どもが生まれてますから(しかもその子は後の名君、英祖)、

多少都合よくできているところはあります。

この展開でどうやってオクチョンに死を命じるのかなあって思いましたが、

その辺は歴史で語られていることに沿わなければならないので、

悲劇度は増していきます。

というか、そこまでやる?というくらい。

 

淑嬪以外にも、粛宗とオクチョンの二人を翻弄する人物が出てきます。 

オクチョンの初恋の相手であるチョン・ヒス(ジェヒ)が、

後半、いろんな人間関係をかき回す役で出てくるんですが、

結局オクチョンが彼になびかなかったのでなんか空回りな感じでした。

粛宗のいとこ、東平君(イ・サンヨプ)は、ただ一人王様を理解するようないい役どころでしたけど、

結局タダのいい人でした。

もうちょっと王様の右腕っぽければ~と思いました。

粛宗は、いとこの東平君も、周囲のだれも信じられず、オクチョンだけって言うのがこのドラマのキモだったのに、

そのオクチョンも、結局は政治をあやつった悪女になり切れず、女の面を押し出したがために

淑嬪や周囲に足元をすくわれた感じです。

 

やっぱり後宮で立ち回るには、

イニョン皇后のように頭が切れすぎるだけでもダメ(女として見られないし)、

チャンヒビンのように愛情だけでもダメ(行き過ぎると嫉妬が深くなるし)、

淑嬪に至っては、「字も読めない」頭の弱さが災いしました。

淑嬪の意地の悪さを見ていると、「この先ろくなことがないぞ」と思うのですが、

歴史的にはお世継ぎを産んで、一番ラッキーな人ですよね。

 

前半粛宗の母、大妃(キム・ソンギョン)がなくなるまでは、

この母とオクチョンの嫁姑の争いがもう大変で、見ているだけでげんなりしてましたが、

後半はオクチョンの欲が深くなって(まあ、息子かわいさからしょうがないところもあるんですけど)、

ユ・アイン君の熱演がなければ見るのは大変だったかもと思いました。

でも、見ちゃった。

 

余談ですが、史劇ではいつも思うんですけど、

母が王に見初められて偉くなった娘に「●●マ~マ~」っていうのがちょっと面白い。

 

個人的には、オクチョンの話じゃなくって、

イニョン王妃が、政略結婚で王妃になったけど、粛宗に一目ぼれしてて、

でもぜんぜん相手にされなくて、

王妃が側室より軽く見られることに怒っている、

「なんで私じゃなくてあっちなのよ!」って思ってる感じが良かったです。

それがあって、すごく粛宗とオクチョンの恋愛が切羽詰まった感じだったから。

イニョン王妃を主人公にしたドラマもありますが、

この時代はどの人物の立場から見ても「面白い」のでしょう。

 

イニョンは死に際に「女として愛されたかった」と言いますが、

イニョンを一度も女として見たことのなかった粛宗の態度は、

そこで簡単に情に流されないのが良かったですね。

最初の王妃、インギョン(キム・ハウン)が亡くなるときには情を見せたけど、

粛宗は、頭のいいイニョンにはそういううわべのことは通用しないって思ったのかなと思います。

 

そういう細かい感情部分はよくできていた(っていうか俳優がうまい?)ドラマだったと思います。

まあ、相変わらず大臣役のおじさん俳優たち(オクチョンの叔父さん役も含む)は、本当にドラマを盛り上げてくれます~。

後半はオクチョンがかつてデザイナーだったということは見事に忘れられ、

どうにか粛宗をつなぎとめようとするかわいそうな女になってしまったことは残念です。

史実は政治をあやつったと言われていますが、彼女は単に粛宗の気を引きたかっただけのように描かれています。

 

「チャン・オクチョン」について後で思い出した話。

朝鮮史上に残る悪女といわれたチャン禧嬪ですが、

彼女についての記述は、ほとんどが英祖の時代にかかれたものだそうです。

英祖の母親は淑嬪ですから、ほぼ淑嬪から見たチャンヒビン像だとか。

それだと、なるほど良くは書かれないわけだ。

 

現実には、チャン禧嬪のお墓は、あとから粛宗や王妃たちと同じところに移されて、トンイのお墓はそこにはないそうです。

そういうところからも、チャン禧嬪にたいして、本当は悪女ではなかったんじゃないかとか、いろんな妄想が広がるのでしょう。

 

www.youtube.com

 

【作品メモ】

  • 韓国放送:2013年4月 SBS
  • 演出:プ・ソンチョル、脚本:チェ・ジョンミ
  • 24話