yoonaのココがみどころ!
■ドキドキもワクワクもない。聞いてたほどハラハラもしないけど、とにかく続きが見たい。
■演技の上手い俳優をそろえたところが最大の見どころ。
■世直しをしたいという韓国ドラマの制作陣の思いをヒシヒシと感じる。
いやとにかく、韓国での放送当時からすごい話題だったので、早くBSに降りてこいと思ってました。なにしろ「トッケビ」を越えたというので。
キャスティング当時の記事に、「韓国の上位0.1%の頭脳が集まって暮らしているSKYキャッスルで、夫は王様に、子どもは天下一の王子や姫に育てたい名門家出身の奥様たちのリアルな欲望をまんべんなくのぞくリアルコメディ」とあって、
そうか、コメディか、と思って見始めました。
「怖い」「ぞっとする」という感想も聞いたし、死ぬ人もでるけど、ホラーではないですね。
「トッケビ」と比べるのは良くない。まったく別世界の話なので。
「面白い~」っていう人、結構見かけるのだけど、
このドラマを、ただ「面白い!」って思えるのは、このドラマの世界とは無縁の人だと思う。
上流社会とも、激化する受験とも。
それを他人事と思って、ものすごく皮肉って描いているのを面白いと思えば、面白いのかも。
上流と言っても、このドラマに出てくる家は、「お金持ち」というだけで、世が世ならば貴族だったり王族だったりというほどのお家柄でもない。
たぶんそこそこの学歴だったら、きっとお金で買えるのだろうけれど、どういうわけか子どもたちをトップの医学部に入れようとするから、いろいろなひずみが起きる。
1つの家族から、ソウル医大に合格した子がでたところからドラマは始まる。その1話の終わりには、合格した子、ヨンジェ(ソン・ゴニ)の母親が猟銃自殺するという急展開となり、ヨンジェの合格に隠された問題が広がっていくわけですね。
ヨンジェの次は、自分の娘をソウル医大に合格させようとしていたソジン(ヨム・ジョンア)は、なんとかヨンジェの母にその秘訣を聞き出そうとするけれど、なかなか教えてくれない。同じく、双子の息子を持つスンヘ(ユン・セア)も先を越されまいとするけれど、ヨンジェの母が入試コーディネーターの存在を教えたのは、ソジンのほうだった。ソジンとスンヘを分けたのは取引銀行の違いでしたね~。
お受験に有利な状況を作るのは、銀行のお得意様サービスの一つなわけで。
これって庶民にはなじみがない(というか日本はそれほどでも)けど、海外の富裕層相手の銀行ならありそうな話。
日本だと富裕層の定義は資産3億円以上のお客様とか言うけど、海外の富裕層はそんなもんではなく、銀行のサービスといえば、資産運用だけではなく、旅行にはプライベートジェットを手配したり、絵画のオークションに参加したり、もちろんお子様が留学するなんて言ったら、至れり尽くせりのサービスをするはず。
入試コーディのキム・ジュヨン先生に合格を請け負ってもらうには、数億ウォンかかるとか言っているけど、ソジンの娘イェソ(キム・ヘユン)一人につく講師の数をみたら、そんなもんで足りるのかなと思ってしまいました。
だって、年に2人しか生徒を取らないんでしょ? (高校生の各学年2人ずつかな?)
ソジンが重箱の底に金塊をいれて渡したりしてたけど、おそらくそれ以上のお金が動いているはず。
ソジンも、ジュンサンの実家にお金の援助を頼みに行きますね。ジュンサンも勤務医で、さすがに彼女の一存ではそんなお金は動かせないようで。それにジュンサンは自分はできが良かったようで、勉強するのにそんなに大金を払うことをよしとしてません。(最後になって、自分の母親に、医者になんかなりたくなかったっていうのは、あきれるけど)
イェソは5歳の頃から、母親の「医者になれ」という方針に従って、勉強ばかりをしてきた。名門高校に首席で合格したんだから、その甲斐はあったんでしょうね。
勉強ばかりしている子=性格が歪んでいるという図式があるのかどうかわかりませんが、イェソはかなり性格が悪い。
子どもの時にできがいいと、なぜか親は「うちの子は神童」と思うようで、さらにソジンには、それを自慢するだけじゃなく、貧しい家の出である自分の劣等感を払しょくし、周囲を見下したいという欲があったので、より一層ムキになる。
確かに、ツンとしてたけど、けっして冷静じゃなかったですね。
子どもがかわいいっていう気持ちは普通にあったと思うのに、母親が自殺するという事件が起きたヨンジェと同じコーディを雇ったり、キム・ジュヨンに殺人の疑いがかかっても子どもを教室に通わせたりとか、普通じゃないなっていうところはいくつもありました。
彼女を普通じゃなくすための、設定、夫には恋人がいたのに略奪したとか、子どもを作って夫の家に強引に認めさせたりとか、彼女の「ひけめ」を裏付ける事実がいろいろと明らかになる。
ソジンが裕福な家の出じゃないなってわかるのは、イェソに「勉強だけをさせてきた」というところ。本当に裕福な家の子は、家庭教師がいたりはするけれど、およそお金持ちがやるようなスポーツとか遊びは、ひと通り子どもの頃に経験してるもんです。
テニス、スキーは当たり前、ヨットとか乗馬みたいな庶民的とは言えないスポーツ、絵画や音楽、マナーとか素養と言われるようなことまで。
4人の妻のうち、育ちがいいと思わせるのは、スンヘだけですね。
どうしてチャ・ミニョク(キム・ビョンチョル)のような人と結婚しちゃったのかわかりませんが、彼が検事から国会議員になろうとしてたので、お金持ちのスンヘと見合いしたんだろうというのは想像できる。
彼女自身は高学歴なので頭も良く、品よく相手を追い詰める。
チン・ジニは自分で「元ヤンキー」と言っています。元ヤンキーだけど実家はお金持ちだったのか、美人だから医師のウ・ヤンウ(チョ・ジュユン)がひっかかったのか、それは謎。
でもまあ、4家族のうちでは、ウ家が一番普通だった。ヤンキーは情に厚いんですね。小ざかしい悪だくみはするけれど、根がまっすぐなので、わかりやすい。
「口を引き裂いてやる」というソジンよりは、よほど好感が持てます。
預かった生徒を合格させるだけじゃなく、その家族を次々に破滅させるという、とんでもないキム・ジュヨンにも、ちゃんと背景があります。もともとは彼女の「性格」に由来する事件ではあるんだけど、夫殺しの疑惑をかけられ、超優秀だった子どもに障害を追わせてしまうという過去があるんだけど、だからって?と言いたくもなる。
自分があった不運と同じ目に他人も遭わせる、それもかなり手の込んだ故意によって、というのが、かなりサイコっぽい。
理屈が通らんでしょうと。
そこまでしといて、この人に救いはあるのか?
ヨンジェ一家のように、ソジンの家族もキム・ジュヨンによってだんだん狂わされていきます。
さらに追い打ちをかけるようにジュンサンの婚外子のヘナ(キム・ボラ)というのが登場して、この子はキム・ジュヨンとグルじゃないかと思わせたのだけど、キム・ジュヨンに操られるかのようにソジンの家に入り込む。
キム・ジュヨンがヘナを家に入れろって言ったことがすごく変だし、それを受け入れちゃうソジンも変ですよね。たぶんヘナが一家を引っ掻き回したら、イェソが無事にソウル医大に合格できない、合格できなければ、そのあと一家をぶち壊したいという自分の策略も壊れるからだと思うんだけど、
あとでヘナを殺すくらいなら、家に入れる前にどうにかしそうなもんです。
もちろん、ヘナが一家に入り込むというかSKYキャッスルの住民になったことで、その後の悲劇が起こるわけだけど。
SKYキャッスルをかき回したのは、おしゃべりなチン・ジニ(オ・ナラ)のように見えるが、私は彼女よりも、イ・スイム(イ・テラン)のほうが、かなり攪拌力が強いと思う。
それなりに同じ価値観で生きていた人たちのところに、まったく違う価値観を持ち込んだんだから。もちろん彼女もまた、ココで起きている問題に首を突っ込まざるを得ない過去を持っているんですね。非の打ちどころのない息子と思われているウジュ(SF9のチャニ)が夫の連れ子だったという子ともあるし。
最後に彼女が、SKYキャッスルの出来事を本にするが、「あまり売れてない」という事実に、いかにここでの出来事が世間一般からかけ離れているかということを物語っているように思う。
自分の意思で他人のお金を使ってその人生を狂わせようとするキム・ジュヨンの物語ならスリラーだけど、お金がありすぎて受験が有利になるという世の中上位0.1%の不公平な話は、当事者以外にはそれほど響かないのかなと。
こう見てくると、このドラマ、何が面白かったのか、さっぱりわかりません。
ただ、次が見たいという一心で、最後まで見てしまいました。もう二度と見ないかな。
み~んな演技がうまいので、それだけでも見ごたえはある。
話の本筋とは関係ないところはいろいろ面白かったです。
お金持ちマダムたちのファッションとか、間取りがよくわからない豪邸の中とか。
わが子を殺してしまったと思って、公の場で母親に向かって泣き崩れるジュンサンは、究極のママボーイでした。50年も生きて「オンマのせい」にするか。
私はずっと、いつかチョ先生が、キム・ジュヨンに「もうやめましょう」っていうのかと思っていました。チョ先生はそこまで心底ワルには見えなかったんですよね。
なにがチョ先生をそこまでさせるのか。高級マンションを買ってもらうくらいじゃ割にあわないでしょ、と。
キム・ジュヨンが捕まる段になってようやく彼らの悪縁がわかったけど、そうか~って感じで、その前から不倫関係とか、そっちのほうが面白かったかな~って。
そういえば、SKYキャッスルではみんな子どもの教育に熱心すぎて、色恋沙汰はなかった。ヘナとイェソとウジュの三角関係なんて大したことないし、親同士は、それほど異性としては魅力がなかったんですかね。
ジニが息子を助けてくれたファン・チヨンにちょっと、うっとりするくらいで。
そんなものより「(夫じゃなくて)お金が大事」ってわかってるんですかね、お金持ちって。
韓国ではストーリーの展開に比べて、ラストが物足りないという感想が多かったそうだ。
確かに~。みんな丸く収まってるし。
放送も何話か延長したらしい。
これくらいのすごいことが起きたなら、誰かが立ち直れないとか、お金を使い果たすとか、それくらいのことがないと、庶民感情としては収まらないのかも。
特にカン家の家族が子どもまで、すべてを受け入れて、なんかすごく物分かりの良い一家になったのは違和感がある。
チャ一家が、父親の威厳がなくなって、子どもたちがのびのびできるようになったのは、スンヘの奮闘もあったと思うけれど、家を飛び出しても自分の「アジト」を持ったり露頭に迷うことはなくて、それもまた別世界の話。
ハーバードから訴えられたセリが世間に批判されることなく見事に立ち直るのも。
ファン家のウジュは殺人容疑がかけられるが、無罪釈放後に学校に戻ることなく世界に旅に出る。それもお金持ちっぽい。ほとぼりが冷めるまで、韓国にはいないほうがいいしね~。
思うに、このドラマの制作者は、こういう一部の上層階級だけに恩恵があることを知らしめ、追い詰められる子どもを救いたいっていう気持ちがあったようなんだけど、
そこを暴露するだけで、一人一人の人がどうやって立ち直るか、どういう末路になるかというところには焦点を当ててなかったみたい。
親がまともな感覚になれば、子どもは救われるみたいな結末になっているけれど、もし子どもがどうしてもここに行きたいとか、こうでなければいやだということになれば、やっぱりその不平等の中に飛び込んでいかざるを得ないのかも。
カン家がSKYキャッスルを出ると、すぐにまた別の一家が入居。
挨拶に来た新しい住人が入試コーディを探すというと、顔を見合わせて笑う3人。
庶民の町なら、そんなことをしたら何が起こるかとか、あっという間に全部を教えてくれるだろうに、ここでは含み笑いをして、お手並み拝見ということになるのかな?
別の意味で、私たちとは違うって言いだしそうな気がするけど。
【作品メモ】
韓国放送: 2018年11月~ JTBC
演出:チョ・ヒョンタク 脚本:ユ・ヒョンミ
全20話
印象的なOST曲。
「We All Lie」(私たちはみんなうそつき)というタイトルが笑える~。
いつも思うけど、ウソってウソを重ねるんですよね。
本当のことはウソっぽくはなるけど、ウソにはならない。