韓ドラとソウルホテルと。

韓国ドラマのレビューブログ(基本的にネタバレ)。ときどき昔話。

赤い袖先

yoonaのココが見どころ!

■ジュノ、除隊後、初の史劇

イ・ソジンの「イ・サン」との違い

■表にでることのなかった宮女の生き方について

 

野球シーズンが終わり、ようやく韓ドラシーズンに。

折よく、BSフジで「赤い袖先」の放送が始まりました。

配信じゃなくて韓ドラを見るのは久しぶり。韓国では17話で放送されたドラマですが、日本では27話に再編成されて放送です。

 

おととしから話題だったので、見たかったドラマ。

私は「長い史劇」が苦手なので、20年近くも韓ドラを見ているのに、なんとイ・ソジンの「イ・サン」を見てないので(今さら見れないし)、

韓国で一番有名なこの王様のドラマを見てないんですよね。

祖父の英祖から、思悼世子の悲劇、名君正祖の流れは知っていますが、細かいところはよく知りませんでした。

 

「赤い袖先」では、イ・サンの生涯というより、彼の最愛の側室、ソン・ドグィムも主役級の扱いで、どちらかというと王様のそばに使える「宮女の生き方」的なこともメインテーマになっています。

「イ・サン」が作られてからまだ20年もたっていませんが、「女性の生き方」に焦点が当たるところが時代なのかも。

 

タイトルがいいですね。

宮女の服の袖先の「赤」と王様の赤い服の両方を指していて、明らかに大きく違う身分の二人の袖先が触れ合うということの意味を含んでいます。

明らかに身分が違うとはいえ、お手付きになって大出世することもあるわけですから、そこにドラマも生まれ、嫉妬や陰謀が渦巻くのは無理もない。

しかも、子どものころから、王様だけを思って生涯をささげるわけですから、過酷な生き方といえばそうですが、晴れて側室になれたからと言って、すべてがうまくいくというわけではなく、王子を産めるかどうかによって、また女たちの争いも生まれてくる。

しかも、王様のお手がついたら、生涯王宮から出ることも許されないわけで、

息抜きというか、気晴らしというか、目の前の狭い世界の中のことを考えるしかなくなるわけですから、どれほど気の詰まる日常なんだろうと思うと、やり切れませんね。

 

韓国の原題は「袖先赤いクットン」だそうで、「クットン」が「宮女の赤い袖先」のことを指すのですね。

 

ドグィムは何度か「側室になれ」という王様の命令を断るということで有名ですが、

いくら好きでも、そこまで私の人生を束縛されたくないわっていうことを、どうして彼女が考えたかということがよくわかるドラマです。

 

もう少し彼女の身分が高ければ、あるいは相手が王様でなければ、二人は恋愛を楽しむ関係にもなれたのかもしれませんが、ドグィムを手放したくない王様と、断れば自由どころか死罪になりかねないドグィムでは、選ぶ道は一つしかなった。ドグィムも決して王様が嫌いなわけではなかったから、彼女の選択も難しかったでしょうね。

でも結局それが彼女の人生を縮めたようにも見えます。

 

このドラマではあまり詳しく描かれませんでしたが、王様にはすでに正室(王妃)がいますし(世孫になったのだから当然よね)、ほかに側室もいたし。

しっかりした自我のある女性としては、その時代では当然のこととはいえ、なかなか大変な状況ですよね。

ドグィムが懐妊したと聞いて、王様が彼女のもとへ駆けつけようとする足を翻して、王妃のもとへ行った、というエピソードが出てきますが、ここは側室という立場の哀しみがよくわかるシーンです。

 

ま、イ・サンとしても、父親は殺され、幼い時から世孫として暮らしていたから、温かい家庭に飢えていたということもあるかもしれませんが、

一番好きな人を妻に迎えるということも、ある意味王様としてはなかなかあり得ない状況なのでしょうね。自分が一声命令すれば、それは思い通りになるかもしれませんが、自分が命令するのではなく、相手からそう思ってほしかったという思いも強く伝わります。

 

英祖亡き後、王宮の最高位に君臨するキム大妃もまた、生涯を王宮に閉じ込められるという哀しい人生を送る人だと思います。誰の味方もしないように、上手にふるまってはいますが、いつの時も一つ間違えれば自分の立場が危うい。

王宮という狭い世界で、「賢くふるまう」ことの難しさを、よく表現していたと思います。対局にあるのは、英祖の娘であるファワン翁主ですよね。

彼女は生まれながらに王の娘だから、多少のわがままは仕方ないとして、最後までその性格故に賢くふるまえなかった。

イ・サンの二人の妹が、夫とつつましく暮らしているのとも対照的です。

 

女性の生き方といえば、秘密組織の棟梁であった提調尚宮の人生も悲しい。彼女もある意味王宮のしきたりの犠牲者ですよね。王様の寵愛というものをめぐって、ほかのだれかと争ったときに、嫉妬が渦巻くのは仕方ないと思うんですよ。

愛が深いほど、嫉妬も深いのは仕方ない。むしろ、慈悲とか慈愛をもって、相手を見ることのほうが、普通の人には難しいでしょうね。

でもその情念が凝って、人を陥れたり、殺めたりすることになっていく、しかも仲間を募って洗脳していくっていうのが恐ろしい。でもそれも、王様とそれを取り巻く人々の関係に起因しているんですからね。

 

ま、名君といわれる王様でも、宮女一人、守り切れなかったなあと思うと、なかなか切ない物語ではあります。

 

ドグィムの友達3人のそれぞれの生き方もよかった。

最終話で、王様の前に提調尚宮としてあらわれたギョンヒをみて、ただ一人生き残った彼女は宮女としての人生をまっとうしているんだなと思うし、4人の宮女それぞれの生き方が全然違って、子供のころからの友達であっても、人生はこんな風に違うんだなということを改めて思いますね。

 

ジュノ君のドラマはいくつか見ていますが、彼はだんだん良くなる。

かわいく笑う顔と憂いに沈む表情が同居していて、いろいろな感情を見せてくれるのと、韓国人らしい涼しげな一重まぶたで、韓服がよく似合うのと。

ドグィムが好きで好きでたまらないというところも、若々しいイ・サンとしてよく表れていました(といっても、ジュノも30を超えているけど)

 

このドラマは当初はイ・サンもドグィムも別の俳優のキャスティングを予定されてたそうですが、終わってみれば、この二人でとてもよかったですね。

 

ドラマの後半に向かって人気がでたため、1話延長したそうです。

最終回があってもなくてもよかったように思うのはそのためですかね。

ドグィムがなくなるところで、イ・サンとドグィムの話は終わりなんですが、イ・サンのその後を見れてよかったというよりは、友達3人のその後がわかってよかったと思いました。

 

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このドラマのPRというかMVとか、やたらキスシーンが多いのですが、

実際のドラマでは、全然キスシーンが出てこなくて、ちょっとイライラしますね~。

 

【作品メモ】

韓国放送:2021年11月~、MBC

演出:チョン・ジイン 脚本:チョン・ヘリ

全17話