yoonaのココがみどころ!
■見る前からシーズン2があるとわかっているドラマ。シリーズものを嫌がる韓ドラとしては珍しい。12話だけど先は長そう。
■主役5人が同じ職場、しかも40歳の大学同期生、という設定。現実にありそうで、ない。
■「応答せよ」シリーズの監督+脚本家によるドラマ。
どこにでもある日常を舞台に、というドラマだけれど、まず、大学の同期5人が同じ職場にいる(それも同等の地位で)、という設定があり得ない。
5人の間には友情はあるけれど、嫉妬や競争心は見えない。それぞれ専門分野が違っているし、誰かの出世が遅れているわけでもないし。
自分を振り返っても、学生時代の仲間には会えば話しが弾むけれど、年中一緒にいるわけではないし、仕事も違うし立場もそれぞれだ。
5人はそろってソウル大医学部出という設定で、勤め先の病院は大学病院ではないので、厳しい出世争いもない。その部分で、医者である前に人間として疲弊してないので、日々難しい患者が飛び込んでは来るけれど、ああ、こういう病院で、こういう先生に診てもらいたいなと思わせるものがあります。
小児外科のジョンウォン(ユ・ヨンソク)は、実はこの病院の理事長の息子で、5人の中では病院内でも立場的にも一歩リードしているはずだけど、それを表に出さず、父が亡くなっても後を継ごうとしない。
彼には2人の兄と2人の姉がいて、普通ならそこで後継者争いがおきても不思議ではないが、どういうわけか4人とも聖職についていて、末っ子のジョンウォンだけが医師であるところが、いかにもドラマっぽい設定(笑わせるところ)である。
父の後に理事長となるのが母の幼なじみであるジョンスで、この人を強面のキム・ガプスが演じているだけに、この人に病院を乗っ取られるのでは?と思えたが、彼は予想以上の「いい人」で、ジョンウォンは安心して病院経営を任せることになる。
ジョンウォンの母(キム・ミスク)とジョンスは60年来の幼なじみで、昔のことだから、それぞれ親の決めた人と結婚したようで、互いに伴侶を亡くした後は、遠慮のない友人関係になっている。この二人の関係は、5人の30年後を見ているようにも見えますね。
ほのぼのとしたジョンウォンの家庭と対照的なのが、産婦人科医のソッキョン(キム・デミョン)の家族だ。
若い愛人をつくって出て行った父親と、その夫を許さず離婚もせず意地を張りとおす母親の間で悩みながら、病院ではそんなそぶりも見せない働きぶり。
バツイチでもあるソッキョンが「産婦人科医」というのがなんか皮肉な感じでもある。
胆肝膵外科のイクジュン(チョ・ジョンソク)は、妻が単身赴任中、ソウルで保育園児の息子ウジュ(超、印象的な顔の子役)を育てながら忙しい毎日を送っている。
5人のうち、家庭的な背景がわかるのは(シーズン1では)この3人だけ。
胸部外科医のジョンワン(チョン・ギョンホ)と脳神経外科医のソンファ(チョ・ミド)については、独身ということしか出てこない。
序盤のエピソードによって、5人の関係性やそれぞれのキャラクターがよく説明されているが、何しろ病院関係者や患者だけでもかなりの登場人物になり、3話くらいまでは、その相関関係を理解するのにけっこう苦労する。
ただ、徐々にいろんなことがわかってくるというより、次々に患者が運ばれてきて、緊迫感のある場面が出てくるので、そのスピード感でどんどん見てしまうという感じのドラマだ。
「応答せよ」シリーズの監督と脚本家の作品だとのことで、同年代の群像ドラマとしては似たところがあるが(男4人、女1人)、彼らの年齢が40歳という設定が、より制作者たちに近いということもあり、「応答せよ」シリーズに感じた懐かしさよりも、彼らや患者たちの悩みがより身にしみるというか、切実な感じがある。
普通、40歳の同期だったら、違う職場、違う都市、違う経歴を持っていると思うが、大学の同期が40歳の時点で同じ職場にいるという設定だけでも、かなりメルヘンというか、うらやましく思える点である。
自分たちは優劣を競わない関係だが、イクジュンにしか子供がいないということも、誰にも伴侶がいない(イクジュンは離婚する)ことも、友情以外にあいてによけいな遠慮や気配りを必要としないという点では、好都合な設定であるだろう。
5人が集まってバンドをやるという設定がまた面白い。単に彼らが学生時代をすごした90年代の音楽をOSTとして使うのではなく、彼らに演奏させることで、多忙な職場とそうじゃない生活とのメリハリをつけることのありがたさを見せている。
ありがたさは「感謝」でもあり「有り難さ」でもある。
手に専門的な職業があって、稼げて、気の置けない友達がいるということのうらやましさ。
少しの失敗が「ごめんなさい」ですまない職業だからこそ、そういう場所を持っていることが大切なんだと気づかせてくれる。
5人は、それなりの立場なってもまだ、患者やその家族、周囲の人たちによって新たなことに気づかされ、認識を改め、自分の考えを述べ、理解を深めていくという「よくできた」人たちなのだと思う。
こういう人物が職場で身近にいると、その人の容姿は別として、たぶん恋愛感情も生まれてくる。
その辺も、ドラマではうまく描かれていて、尊敬が愛情に変わっていく様子もいくつか登場する。
最初は、「応答せよ」シリーズのように、紅一点のソンファを、誰と誰が取り合いするんだろうと思っていた。学生時代にソッキョンがソンファに告白して振られたという過去があり、独身のジョンウォンとジョンワンのどちらかとのロマンスになるのでは、と想像しながら見ていた。ソンファの態度だけを見ていると、4人ともまったく恋愛の対象ではないように見えるし、考えてみれば、出会って20年もたって何も起こらなければ、何かが起きようがないとも言えるし。
好きになったからといってうまくいくとは限らないというのは日常ではあることだけれど、ドラマは最後にちょっと予想外の展開を見せる。シーズン2へのうまい引導だ。
5人が恋愛の駆け引きもしないし、対立もしないので、誰をひいき目に見ながらドラマを見ていくかというのが難しい。それぞれの専門分野で手術に臨むシーンでは、十分にかっこいいところを見せられているし、普通の人としての長所と短所を併せ持っているので、誰かにというよりは、ドラマに引き寄せられていく。
大病院だけに、やってくる患者(病気)もさまざまだし、それについてくる家族の事情もいろいろだ。医者は病気ともたたかうが、家族とも相対しなければならない。
「必ず治しますと言うな」「最善を尽くしますと言え」というセリフは、医者という職業の命を預かるという微妙なところをよく表している。ドラマを見ていると、「最善を尽くす」ことができる技術や度胸をもった医者が、良い医者なんじゃないかと思えてくる。
5人の専門が、産婦人科のソッキョンを除いて、難しそうな病気を治す専門医だというのがまた一つ設定の妙でもある。高度で繊細な技術を必要としそうな難病患者が多いし、イクジュンについては「臓器移植」のシーンが何度も登場する。これがまたいろいろな人間模様を描くことになる。
病気になると、家族とお金は必ず問題になるものですし。
お金については、「あしながおじさん」という韓ドラらしい設定を用意して、そこから話がこじれないようにしていますね。
「応答せよ」シリーズと同じように、劇中でつかわれる90年代ソングについては、まったくわからないので、その分韓国の視聴者より面白さに欠けると思う。バンドのシーンを延々流すところがちょっと退屈だが、歌詞の字幕が出るので、歌の内容が、その回のストーリーに連動しているということがわかるくらい。
シーズン2の制作が決まっていたために、シーズん1はいろいろな伏線をのこして終わります。
ソンファとイクジュン、ジュンワンとイクスン、ジョンウォンとギョウルがシーズン2でどうなっていくのか、私はソッキョンにも良い人が見つかるといいと思うし(ミナ先生じゃなくても)、いろいろ楽しみです。
【作品メモ】
韓国放送:2020年3月~
演出:シン・ウォンホ 脚本:イ・ウジョン
全12話