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■2PMジュノ、初の主演作
■背景が建設中の百貨店崩落事故で、メインのキャストがほぼ全部この事故の「被害者」なので、明るくはないです。
■ものすごいトラウマを抱えながら、普通に生きたいと願う人たちの話。なので普通に生きている人には想像できないところも。
「キム課長とソ理事」の演技がよかったので、
迷わずジュノの次作を見ようと思っていました。
しかもこのドラマでは主役です。
12年前に起きた建設中のショッピングモールの崩落事故の際、
がれきの中で助けを待つ間に出会ったイ・ガンドゥ(ジュノ)とハ・ムンス(ウォン・ジナ)。
中学生のムンスはモデルの仕事をする妹のヨンスに付き添ってモールに来ていました。そこで付き合い始めたばかりの高校生、ソンジェと待ち合わせをしていました。
ガンドゥは建設工事の仕事をしている父を待つ間にモールの中にいて。
ムンスがソンジェから連絡をうけて、ヨンスから離れた間に、崩落事故は起きました。
見ていると、地震でもないのになぜそれが崩れる?と思うような事故なんですが、
韓国では、百貨店の崩落事故が実際にあって、それがモチーフなのかなと思います。
工期を急かしたために、工事がきちんとしていなくて、上のコンクリートの重みに耐えきれず崩れたということになっていました。
妹のヨンスは亡くなり、ムンスは崩落後数日して救出されました。
ガンドゥの救出は生存者で最後。
事故は被害者だけでなく遺族も、関係者も、多くの人の人生を狂わせました。
自慢の末娘を亡くしたムンスの両親は責任を押し付け合い、別居状態。
事故の補償金で父親(アン・ネサン)はうどん屋を開業し、母親(ユン・ユソン)は美容院と銭湯を経営していますが、アルコール漬けの日々。
ムンスは建築を学び、建築模型士となりました。
ムンスが意外と明るいのが、このドラマにとってちょっとした救いですかね。
ガンドゥは足に大けがをして、現場作業員だった父親は死亡、しかも下請けだったことから補償金が支払われませんでした。自分はサッカー選手になる夢をあきらめ、その後母親も亡くし、医学部に通う妹ジェヨン(キム・ヘジョン)のために多額の借金をして、裏社会でお金を稼いでいます。
ある雨の夜、殴られて動けなくなっているガンドゥをムンスが見つけます。ガンドゥは事故直前に見たムンスのことを覚えていましたが、ムンスは事故当時の記憶を失っていて、ガンドゥががれきの暗がりの中で励ましてくれた少年だと気づきません。
ムンスは建築模型士の腕を見込まれて、ショッピングモールの跡地に新しくできる商業施設の設計をしたジュウォン(イ・ギウ)の建築事務所で仕事をすることになります。
ジュウォンの父親は、崩落したショッピングモールの設計者で、ジュウォンも事故当時、父親の仕事を手伝っていましたが、父親は「設計ミス」という責任を押し付けられ自殺しました。
ジュウォンの母親は、モールを建設したチョンユ建設グループの会長の後妻となります。え~とこれ、なんででしたっけ。ジュウォンのためだったような気がしますが。
ジュウォンはチョンユ建設の娘であるユジン(カン・ハンナ)とは恋人同士だったんですが、親同士の結婚により二人は法的には兄妹になってしまいます。母親の再婚はこの二人の仲を裂くための、無理やりな設定の気がしますけど。
ユジンの兄ユテク(テ・イノ)は、親の後をついでチョンユ建設の理事となりますが、効率とか目先の利益のことしか頭にない。チョンユ建設はもともと産廃処理業者だったのが、そこから建設会社にまでのし上がったんですね。それでなのかどうか、ユテクには建設会社として持つべき安全とか安心とかいう倫理観がないです。
彼は、事故のあと、会社を守るために建設協会の会長の娘と政略結婚をさせられていました。心の慰めは水商売を営むマリ(ユン・セア)。
彼女はまたガンドゥにとっても頼りになる人です。
この入り組んだ人間関係がこのドラマのすべてです。事故がなければそれほどに深い苦悩はなく人生を過ごしていたかもしれない人たち。家族を失い、家族のきずなを失い、夢や愛を無くして、事故を背負い、希望を持てないでいる。
ムンスもガンドゥも、事故現場に戻ってきて、そこで仕事をすることになり、あれこれいろいろあって、新しい商業施設のそばに事故の慰霊公園をつくりことになり、二人は事故の犠牲になった人の遺族を回ることになります。
遺族はみな、自分たちと同じ思いの人たちだと思いますが、それぞれに異なる事故の記憶と戦う人たちであり、改めて自分たちが生き残った意味に悩みはじめます。
ガンドゥは家がなく、安宿で暮らしています。そこの女主人と息子のサンマン(キム・ガンヒョン)が何かと気にかけてくれる。ガンドゥより年上なのにガンドゥをヒョンと呼ぶサンマンには知的障害があって、それだけにガンドゥへの気持ちはとても純です。
ほかにガンドゥを叱ったり諭したりしてくれるのは、闇の薬屋のハルモニ(ナ・ムニ)。
ムンスには親友であるウェブ漫画家のワンジン(パク・ヒボン)がいます。彼女とはムンスが事故後に入院していた病院で出会います。バイクの事故で下半身不随になったため、車椅子に乗っています。
今、こうやって書いていて分かったけれど、事故とは関係ない人たちは、どっか体に障害があるんですね。ハルモニも後に重病が判明します。人の痛みがわかる人たちということなのかな。
ムンスとガンドゥは徐々にひかれあいます。同い年の彼らがつきあうことに何の障害もないように思えますが、ガンドゥががれきの中でソンジェが死んでいくのを目の当たりにしていたことのトラウマとか、事故とはかかわりたくないというムンスの母親の反対とか、ことあるごとに「事故の生き残り」である自分たちが、ただ普通の恋人のように過ごすことができないということを思い知ることになります。
何より、ジュウォンまでもが、「崩落事故」という共通の体験に共感を求めるかのようにムンスに好意を寄せます。結構ガンドゥに張り合ってムンスを奪おうとします。(これもなんか無理があった)
お金も学もないガンドゥはジュウォンの気持ちに気づき、見た目もよく頭もよく仕事もあるジュウォンのほうがムンスにふさわしいと考えますが、ムンスの気持ちはずっとガンドゥに向いていました。
賢くていじわるそうなユジンが徹底的にムンスとジュウォンの間を邪魔するかなと思ったんですが、逆にガンドゥに自分に素直になれとか諭されたりして、彼女は空回りしてましたね。
ほかにムンスとガンドゥがくっつくことになんか問題があるのかな~と見ていたのですが、最後にやってきました。
ガンドゥの病。しかも重病。
事故で足だけでなく肝臓も傷ついていたガンドゥは、その後も経過を見ていなければいけなかったのに、ほおっておいたおかげで肝炎を発症し、いずれ肝不全をおこして死んでしまうだろう、助かるには肝臓移植しかない、というもの。
これはもう、無理やり二人の間に障害を作ろうとしたかのようで、なんか違和感ありありでした。死んじゃうのかそうでないのか、終盤ハラハラしましたが、これだけの事故のトラウマを背負って生きているガンドゥ、ようやく愛する人を見つけた彼を最後に死なせる意味が良くわかりませんし。
でも、これを機に、それまで兄の存在をうざったそうにしていた妹のジェヨンが、移植のチャンスを探すために奔走したりとか、家族としても絆を取り戻す方向に向かいました。
崩落事故のその後の物語から、肝臓移植にドラマのテーマが移ったかと思うくらい、終盤では、「え? 慰霊公園の話は?」という感じになりました。
見終わってみると、結局はガンドゥとムンスがくっつくという初めから見えていた結末に、結構いろいろあったけど、なるようになったね、なにがあったっけ?という気がします。
彼らの物語にとって、みんな脇役でした。
あとから、演出が「優しい男」の監督だと知って、ああ、なるほど、と思いました。
「優しい男」の静かなエンディングと似ている気がします。
すべてがここへたどり着くまでに必要なことだったと。
事故の記憶は二人にとってもつらいわけですが、事故がなければ二人は出会わなかったかもしれない。
想像もできない傷をもった二人が、普通に愛しあうことの難しさ、それをどうやって乗り越えていくのかを描いたドラマかと思いますが、それはムンスとガンドゥだけのことではなくて、ジュウォンとユジンもそうだし、ムンスの両親にとっても同様です。
みなが愛を取り戻すわけではない。それを忘れて生きたい人だっているわけです。
ムンス役のウォン・ジナさんは、120倍のオーディションでこの役に抜擢された新人だそうです。ちょっとスエさんに似た雰囲気があります。角度によって美人にも見え、それほどでもないなと思えるときもある。
ジュノの顔がすっきりしているので、「穏やかな愛」をはぐくむというイメージに二人ともあっている気がしました。
ユジン役のカン・ハンナさんのほうが「韓ドラ女優」らしいです。「麗」の皇女役っぽい役回りでした。
イ・ギウさんは久しぶりに見ましたけど、相変わらず「背が高い」。ムンスと並んだ時のバランスの悪さが、ああ、この二人はくっつかないな、と思わせてくれて。
ガンドゥの済む宿の屋上からの景色は見たことがあって、「サム・マイウェイ」のあのアパートの屋上と同じ風景かと思いました。調べてみたら、近くだけれど違う建物の屋上がロケ地だったようです。
【作品メモ】
- 韓国放送:2017年12月~ JTBC
- 演出:キム・ジンウォン 脚本:ユ・ボラ
- 16話