韓ドラとソウルホテルと。

韓国ドラマのレビューブログ(基本的にネタバレ)。ときどき昔話。

ピョン・ヒョクの恋

yoonaのココが見どころ!

■チェ・シウォンの「彼女はキレイだった」での好演後、入隊して除隊後復帰作のとして期待されてた作品。でも視聴率は超イマイチ。

■カン・ソラが出るということで前評判があがった作品。

■本当に財閥の御曹司であるチェ・シウォンが、財閥のドラ息子を演じるというキャスティングの妙で見せようとした作品

 最初の2,3話を見て、ピョン・ヒョク(チェ・シウォン)という財閥のドラ息子の放蕩ぶりがあまりに大げさで、ばかばかしかったので、これを最後にどういう風に着地させるのかなあと心配になったドラマでした。

 

というのは、チェ・シウォンという人は、のSuper Juniorのメンバーでありながら、実際にも財閥の御曹司であり、敬虔なクリスチャンで真面目で紳士的な人として知られているから。およそ、このピョン・ヒョクが繰り返すような、金遣いの荒い、仕事もしないで遊んでばかりいるタイプとはほど遠いということを、みんなが知っているうえで、あえてこの役をやっていることの現実とかけ離れた感じが、受け入れられるのかどうかってところに疑問がありました。

 

普通はドラマでこういう役をやったら、彼本人もこういう人なのかと思われがちですけど、この役に至ってはそういうところが全然ないわけですし。

さまざまな失態の後始末を、父の部下にやらせておいて、やりたい放題、というのは、現実の財閥の息子にはありがちなことなのかもしれませんが、チェ・シウォンはそうではないよね、というのがどうしても頭から離れなくて。

 

飛行機の中で、泥酔してあばれ、CAに痴漢行為を働いたことから、警察に追われる身となったヒョクは、世話係でもあるクォン・ジェフン(コンミョン)の家に身を隠します。ジェフンの父親はヒョクの父・ガンスグループの会長の運転手で、親子二代にわたって財閥に仕えています。ジェフンは望めば検事にもなれたほど優秀だが、会社ではヒョクの兄ウソン(イ・ジェユン)に仕え、ヒョクのしりぬぐいをさせられる日々。

ジェフンの父は、ヒョクがかぶったウソンのひき逃げ事故の罪をかぶって、逮捕されたことがあるんですね。

親子二代で、横暴な会長に仕えるというのはほかのドラマでもみたシチュエーションです。こういう上下関係は一度はまったら逃れられない社会なんでしょうね。

 

アルバイトを転々としながら暮らすフリーターのペク・ジュン(カン・ソラ)も、父親がガンスグループで働いていたことがある。父親は汚名をきせられて会社をクビになり、一家がばらばらになるという経験をしているため、正社員になっても結局使い捨てられるという考えに固まり、アルバイト暮らしをしています。

で、ひょんなことから、ガンスグループの清掃員として働くことに。

 

ジェフンとジュンは同じ大学で、ジェフンはかつてジュンに告白したことがありますが、ジュンに振られてしまう。でもジュンのことが忘れられないジェフンは、アパート探しをしているときに、偶然ジュンが住むアパートの一室を紹介されて、そこに住むことにします。

屋根部屋にジュンが住み、2階にジェフン、3階には、ジュンの友達でCAのヨニ(ヒョクが飛行機で痴漢を働いた相手)(キム・イェウォン)、その隣には、ヒョクを追いかけていた警官のチョルミン(カン・ヨンソク)が引っ越してきます。

ドラマはガンスグループのオフィスとこのアパートを舞台に展開するのですが、なんともまあ、都合のいいことというか。

 

話はそれますが、このキム・イェウォンという女優、ヒロインの友達とかライバル役で良く見かけますが、すばらしくいいスタイルなのに、けっこうドジというかコミカルな役が多いですね。

 

ヒョクがジュンと関わり、正社員として働くことができない人たちと関わるようになって、それがいかに理不尽で自分の世界とは違うかということを知るようになります。

ヒョクが本来持つちょっと天然なところ、まっすぐなところが、「社会を変える」という大それた発想になっていく過程がドラマに描かれているわけですが、そもそも、ピョン・ヒョクという名前は、読み方が「変革」と同じであるという伏線が引かれています。

 

幽霊会社をつくって裏金を作り、従業員たちを威圧して押さえつけるという、古い体質の財閥そのものであるガンスグループを、従業員たちが不正をあばいて立て直していくというストーリーなら、日本の「半沢直樹」と似た部分がありますが、そうはならないのは、ベースにコメディという要素をふんだんに盛り込んでいるため。

一歩間違うと社会派のドラマになるところを上手にかわして、いかにもありそうで、実はそんなことはない話に仕上がっています。

 

ジュンをはさんで、ヒョクとジェフンの三角関係もコミカルに描いているし、ヒョクとジェフンの親同士の関係からくる気まずさ、ヒョクと兄ウソンのいいんだか悪いんだかわからない兄弟関係。

特にこの兄弟は、はじめは異母兄弟かと思うくらいでしたが、根っから意地の悪い兄は父親似で、天然の弟は母親似だとわかってきます。この母親(キョン・ミリ)が、夫に何でも従うでもなく、次男を溺愛して甘やかすだけの母親でもなく、ジュンの良さを素直に認めたりして、いい味を出しています。たぶん父親は成り上がりの家系だけれど、母親は育ちがいいのでしょうね。

 

二人の息子を競わせて、強いほうを跡取りにしようとするこの父親は、李氏朝鮮時代の王様を思わせます。当時なら弱肉強食もありかと思いますが、共栄共存のこの時代に、なんちゅう時代錯誤というか。

それを思い切り極端に描かないと、ヒョク一人ができる「変革」では成果がわかりづらいのかもしれませんが。

 

タイトルが「ピョン・ヒョクの恋」ですが、韓国版は「恋」というよりもっと万人に対する「愛」の意味が強いと思います。恋人にいう「愛してる」よりも、もっと普通に誰にでもいう「サランへ」のほうですね。

ヒョクという人は、ジュンだけでなく、自ら親友と呼ぶジェフンにも、自分に対してひどいことをする家族にも、一緒に働く人たちにも、そういう愛を向ける人なんですね。

誰かが得をして、誰かが傷つく、ということを選ばない人。

そこで「ユニセフ親善大使」でもあるチェ・シウォンのキャラが符号し、生きてきます(^^;

 

なのでやっぱり恋愛要素よりも、普遍的な愛のほうがテーマかなと思いました。

 

三角関係では「二番目の男」がかっこよくないと面白くないというのは決まりパターンですが、このドラマでは、ジュンがジェフンになびきそうな場面がなくて、最後はヒョクに行くんだろうな~というのがずっと見えてたところが、イマイチだったかなと思います。

「ジュン、いいから、そのバカはほっといて、ジェフンに行け!」と言いたくなるような場面がなかったですね。

反対に、ヒョクは、正義のためとかいう大前提はあっても、結局はジュンにいいところを見せようというのがあって、ジュン一途というのが見えてました。

コンミョン君も頑張ってたし、ジェフンのキャラもよかったんですけど、もうちょっと大人が演じたらどうだったかわかりませんね。

 

ヒョクの母親が、ジュンに「あなたのやりたいことは何な?」と聞いたところ、そこでジュンが自分のやりたいことはなんだか考えてきたことがなかった、ということに気づいたところはよかったです。

これ本当なら、ジュンの母親のセリフですよね。ジュンの母親はもちろん娘の生活の安定を願っていましたが、お金の無心をしたり心配ばかりで、やりたいことをやれとは言わなかった。

もう、ヒョクは絶対この母親の血筋ですね。実の息子を殴る蹴るの父親と、弟に罪をなすりつけて引きずりおろそうとする兄の元で、この母親が光明です。

 

ガンスグループの不正を暴き、働きやすい会社にしていこうとすることで、会社での地位を得たヒョクは残業の毎日。

毎日働き詰めだったジュンとジェフンは、仕事をやめてのんびりしているのが、なんか最初と立場が逆転してて面白かったです。

 

ジェフンは、復権した専務に呼ばれてガンスグループに復職、ジュンはやりたいことを求めて海外に行くことになります。

ジュンらしくないなと思ったのは、海外に行くことをヒョクに隠していたこと。

もちろん、引き留められることがわかっていたからかと思いますが(というかラストシーンのためには言わないほうがベター)、そこはきちんと話せば、ヒョクも理解してジュンを送り出したのではと思います。

 

空港で、いがみ合ってた二人の母もどうやら仲良くなれそうだとわかったので、ジュンとヒョクの未来も安泰かなという予感もさせました。

 

キャスティング当初から前評判の高かったドラマですが、放送が始まってから、シウォンの家の犬が隣人に噛みつく事件があって、そのことでドラマの内容とは関係ないところで、シウォンへの降板要求だとか批判が多く、最後まで視聴率を稼げないドラマでした。

コメディとしては適当な長さですし、それなりに面白く見られましたけど。

 

それから、どうでもいいことですが、コンミョン君は、キム・ジェウォンさんの若いころによく似ていますね。

で、コンミョン君の弟はNCT127というK-POPグループのボーカル・ドヨン君で大変歌が上手い。

 

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【作品メモ】

韓国放送:2017年10月~

演出:ソン・ヒョヌク/イ・ジョンジェ 脚本:チュ・ヒョン

16話