yoonaのココがみどころ!
■「応答せよ」シリーズの2作目。いろんなところで前作を踏襲しつつ、違う若者たちのストーリーになっている。
■前作同様、「ヒロインは誰と結婚するのか」が最後までわからないしかけだが、実のところは「初恋は成就するのか」がテーマだと思う。
■「1997」よりも登場人物たちがちょっと大人なぶん、酒と恋愛が濃い。
全21話なんですけど、
1話が65分だったり1時間半もあったりと、かなり変則的で、
1話終わるごとにストーリーを思い出そうとしても、エピソードがてんこ盛りなので、
何が起こったのか全部を思い出すことができません。
ヒロインのナジョン(コ・アラ)だけを追うことはできるのですが、
新村下宿の住人たち一人ひとりがみんな、自分の人生の主人公なわけで、
個々のエピソードも丁寧に追いかけているので、
いくつものドラマを同時並行で見ているような気がします。
前作、「応答せよ1997」の設定を踏襲していることも多いし、
とにかくたくさんの伏線が張られているので、
セリフ一つ、家の中の置物一つ、すべての面白さに気づかないこともありそう。
実際、韓国人ならば、覚えている1990年代のことも、日本人では知らないことが多く、
くすっと笑えるところをいくつも逃していると思います。
家族と下宿人が居間でテレビを見るシーンが多いのですが、
私が見たAmazon プライム版では、画面がぼかしてあり、
何を見てコメントをしているのか、それの何がおかしいのかが、よくわからないことが多々ありました。
下宿のお父さん、ソン・ドンイルは、何をやっても的外れなことを言う、予測が当たらないというキャラ設定ですが、たぶん、当時出てきたばかりのスターたちを見て、
「こんなのは売れない」とか言っているのでしょう。
YouTubeに上がった動画を見ていると、画面がはっきり映っているものもあって、
チョン・ジヒョンやウォンビンやペ・ヨンジュンに、文句をつけているのがわかります。
このドラマの大テーマは「ソン・ナジョンの婿探し」ということになっていて、
1997版同様、ヒロインの結婚相手が最後までわからず、見ているほうをやきもきさせています。
ただ、早い段階から、おそらく相手は幼馴染のお兄さん、スレギ(チョンウ)であろうということが想像でき、そこにたどり着くまでの、二人の思いやすれ違い、ライバルの登場など、さまざまな障壁が立ちはだかってきます。
ただ、いわゆる韓ドラからすると、病気、事故、記憶喪失といった、とてつもない壁ではなく、
20代だったら、きっとぶち当たるだろうというくらいのこと。
後になって思えば、どうしてそんなことであんなに悩んだんだろうと思えるくらいのことが、繰り返し起こってきます。
ドラマでは20年後の仲間たちも登場し、どうやらそれぞれが自分の道と伴侶を見つけて、それなりに暮らしているようなので、
20年前に起こったことも、人生を180度変えるような大事件ではなかったにしろ、
一人一人にとってみれば、あの時はこうだったなと懐かしむことができる、
なつかしさでいっぱいの思い出になっている、という話です。
「婿探し」よりもむしろ、「初恋は成就するのか」というのが、前作からの大きなテーマであり、
大きなドラマもない20代の若者たちの日常を描きながら、
初恋の相手と結婚するという一番ハードルの高い恋愛こそがファンタジーだと思わせてくれるドラマでした。
(1997もそうだったけど)
なんだ、いろんな男が登場したけれど、結局初恋の相手と結婚するのか、と思いつつ、それが一番難しいんだよねとも思います。
だからドラマになる。
1997版と異なり、ドラマの舞台はソウルに移ります。
一家(両親と娘)は4か月前に馬山からソウルに出てきて、下宿を開業。
当時は地方から出てきた大学生はこういう「賄いつき」の下宿に住むことがほとんどだったのでしょう。
1970年代、私の実家の向かいにも、同じような食堂のある下宿があって、
大学生のお兄さんたちが入れ替わり立ち代わり住んでいたので、懐かしい感じでした。
1997版は高校の同級生たちが主人公でしたが、1994版は下宿の住人が主人公たちです。
みんな前作より少し大人になっている(お酒も飲める)、地方から出てきて、都会の生活と言葉に少しコンプレックスを持っています。
下宿には、父親が親友同士のスレギも住んでいて、ナジョンとは取っ組み合いのけんかをする兄妹のような関係。亡くなったナジョンの兄の同級生でもありました。
そういえば、1997版のシウォンにも亡くなった姉がいました。
舞台がソウルであることによって、1997版の田舎(釜山)とは違う、世の中の動きもストーリーに大きくかかわってきます。
下宿人のピングレ(B1A4のバロ)のいとこ、ソウル出身のチルボン(ユ・ヨンソク)の両親が離婚し、母親が再婚することに、下宿生たちは一様に驚きを見せます。当時まだ「結婚したら添い遂げる」というのが世の中では一般的でした。
下宿生たちは皆ポケベルを持ち歩き、用があれば相手を呼び出して電話をかけさせます。
音楽はカセットテープで聞き、テレビは一家に一台、人気のドラマは家族そろって居間で見ていました。
この辺は日本人でもちょっと懐かしさを感じるところです。
1997版と共通しているのは、下宿生たちがそれほど貧乏そうではないこと。
この時代に子どもをソウルの大学に出しているのですから、みな地元ではそれなりの家であったり、優秀で奨学金をもらったりしています。
1994年にはサッカーのワールドカップがあり、暑い夏で、金日成が亡くなりました。
そして母(イ・イルファ)の妊娠が発覚します!
ソウルで大停電が起こり、下宿では、みんなが居間に集まって、イ・ムンセがDJをつとめる「星が輝く夜に」というラジオ番組を聞きます。
地方ではDJがイ・ムンセではなかったため、「ソウルに来たらイ・ムンセの声でこれを聴くのが夢だった」と下宿生たちが言うのですが、ラジオも全国放送ではなかった時代なのですね。
ソウルが地方の若者にとって、憧れの地であったことがわかります。
下宿生たちは、紅一点のチョ・ユンジン(Tiny-Gのドヒ)以外は、あだ名で呼ばれています。
ナジョンの夫が「キム・ジェジュン」という名であることが途中で判明するのですが、
誰がキム・ジェジュンなのかがわからないようにするためです。
三千捕から来たサンチョンポ(キム・ソンギュン)、親がバス会社を営むヘテ(ソン・ホジュン)、養鶏場の息子ピングレ。
最近はきついあだ名で呼ぶこともいじめとされるせいか、
こういう最初の印象であだ名をつけ、呼ばれるほうもそれをなんとなく受け入れている様子にも、懐かしさを感じます。
意外に早い段階で、サンチョンポとユンジンはつきあい出し、サンチョンポの名前が「ソンギュン」であることがわかって、ナジョンの婿候補から脱落。
強烈に自己主張するユンジンと、計画通りに事を運びたいサンチョンポがどこまで付き合っていけるのか心配にもなりますが、
サンチョンポの実家でのユンジンのふるまい、
ユンジンの母に対するサンチョンポの態度など、
二人がどこで心を通わせたかというエピソードもきちんと描かれているので、
なんだかんだ言いながら、二人はくっついていくのだろうと想像できます。
このドラマにもいくつかキスシーンが出てきますが、
この二人のキスシーンはシチュエーション的にも最高です!
ヘテは、遊び人を自称しながら、まったく都会的には振るまえないところ、
むしろ故郷の恋人のことが忘れられず、誰とも本気で付き合えないところが純情っぽい。
初恋を忘れられないから、どの女とも付き合えないとユンジンに指摘されて、自分の気持ちに気づきます。
酒を飲むとみんなの秘密をばらしまくるユンジンに、下宿生がどれほど困らされ助けられたことでしょうか。
ヘテはその後、ナジョンとは男女を越えた友情をはぐくみますが、
性格という点では一番いいやつかもと思います。
心配して何度も電話してくる田舎の母をうっとうしく思いながら、田舎でガス爆発があったと聞いて、慌てて母親に電話するシーンがいいですね。
韓国の男子は一様にオモニには頭が上がらないのですが、このシーンはちょっとほろっとしました。
ピングレは存在感が薄く、医学生なのに大学を休学して、音楽の道へ進むんじゃないかと思いましたが、
世の中そんなに簡単ではないということもドラマでは示してくれました。
1997版のジュニと同じく、彼もスレギに気があるのでは?と思わせるところもありましたが、
彼は、自分が本当にやりたいことすらも見つかっていなかったために、難しくて大変な道だとわかっていながら、医学の道に進むスレギにあこがれていたのではと思いました。
ピングレは下宿では影が薄かったですが、下宿生たちのことをすごく観察して、的確に言い当てたりしてました。
父親の病気もあって、自分がしっかりしないとって思ったのかもしれませんし、
親が行けと言ったからではなく、
自分の意思で医学をやり直すと決められたことで、医学部の先輩であるジニ(ジニ)に対しても正面から向き合えたのかもと思いました。
私、ピングレが「確認」といってジニにキスをするシーン、大好きです。
2013年、ナジョンの引っ越し先に集まるシーンで、一人部屋を抜け出し、道路で車を待ちます。
道路で車を待っているシーンが1997版のジュニを思わせるんですよね。(だからピングレにも同性愛者説がでたのか?)
ジュニを迎えに来た人は男なのか女なのかわかりませんでしたが、ピングレは妻になったジニに会いました。夫婦そろって医者になったのですね。
一人だけソウル育ちのチルボンは、下宿をする必要がないものの、いつの間にかピングレの部屋に泊まり、入りびたるようになります。
と言っても、彼は国家代表級の野球選手で、いつも合宿とか遠征に行っていて、なかなかみんなとは会えないはずなのですが、ソウルに帰ってくると下宿にやってくる。
もちろんナジョンが好きというのもあると思いますが、両親が家にいないという彼の家庭環境を考えると、
喧嘩ばかりしているけれど温かいナジョンの両親や仲間たちとの生活が、徐々に彼にとって大切なものになっていくかということが想像できます。
「ソウルの初雪」というは、格別なものがあるようですが、
ナジョンとチルボンにも、何度か初雪の場面が登場します。
チルボンはナジョンの気持ちがスレギにありそうだということは勘づいていたと思いますが、三千浦にいるナジョンを追いかけて告白。
スレギより先にナジョンにキスします。
そのあとで、下宿で当時大流行していたドラマ「砂時計」を見るシーンがあるのですが、
その登場人物であるイ・ジョンジェとチェ・ミンスの立場が、ナジョン、スレギ、チルボンの3人の関係に微妙に重なって、面白さを増しています。
その後、スレギは除隊した兄と暮らすと言って下宿を出ますが、入れ替わりにチルボンが下宿生になる。彼はもう、ナジョンと一緒にいたくてしょうがないんですね。
さらに、「三豊デパートの崩落事故」という大事件の日、チルボンと三豊デパートで待ち合わせをしていたナジョンは、チルボンが事故に巻き込まれたのではないかと思い、
現場へ向かいます。チルボンはなにごともなく現れたのですが、ナジョンはチルボンの胸に飛び込みます。
ナジョンは最初からスレギのことが好きでしたね。
憎らしいことを言いながらも、こんなに自分のことを理解してくれる人はいないし、安心できる相手もいないと思っていました。子どものころからそばにいるスレギを好きになるのは当然の成り行きだったと思います。
スレギ側はちょっと事情が異なる。彼の親はナジョンの親に何度か助けられていて、彼はその恩義を感じています。だから簡単な気持ちではナジョンとは付き合うことができない。
それでもナジョンの気持ちがまっすぐに自分に向いてくるのをよけることはできませんでしたね。
チルボンはナジョンに別れを告げて、日本に向かいます。
「何年か先に再会したとき、君の隣に誰もいなかったら、付き合って」と言い残し。
チルボンの再登場はあり得るな、と思われたシーンでしたが、ナジョンには友達以上の感情はなかったと思いますけど。
ただ、この時点では、スレギもまだ医者ではなく学生だったし、チルボンもこれからプロになるっていうところですから、彼らとしては勝負は社会に出て成功してからって想いがあったかもしれません。
チルボンがスレギに「ボール」を渡して去りますが、そのボールは2013年、ナジョンの家にありました。スレギがそのまま持っていたボールなのか、チルボンが奪い変えしたボールなのか、この辺はなかなかどきどきさせます。
世間では、「ソテジ・ワ・アイドル」の解散というニュースが飛び込んできます。
熱狂的なソ・テジファンのユンジンは放心状態になり、食事もままならない。この時のユンジンのあまりのひどさに、サンチョンポは見切りをつけるかと思いましたが、そうではありませんでした。
彼らのきずなは深いです。
やがてヘテに入隊令状が届き、彼らにも順番がやってきます。
スレギは研修で釜山に向かい、二人は別れて暮らすことになりますが、
離れていることに耐えられないスレギはナジョンにプロポーズします。
1997年、ナジョンたちが就職活動を始めたころ、韓国経済が破綻、
就職の決まっていたユンジンは無給で働き、ようやく韓国観光公社に合格したナジョンには、「2年間のオーストラリア勤務」が言い渡されます。
離れて暮らせないスレギにはかわいそうだったけれど、ナジョンは、「私にとっても大事なことだから」と行かせてくれるように頼みます。
なにしろ経済が破綻しているのでね~。スレギもまだインターンの身だし、ようやく決まった働き口を蹴るということは、この状況では考えられなかったのでしょう。
幼いころから一緒にいた二人には、遠距離恋愛はつらすぎました。
お互いの忙しさに振り回され、だんだんと疎遠になり、別れることに。
ここ、あんまり意味が分からなかったんだけど、結局二人にとっては、いつも一緒にいること、いつでも話ができること、くっついていることが大事だったのでしょうか。
仕事が忙しくてという別れの理由はわからなくもないけれど、その前にお互いをどういう風に必要としていたかということがすれ違っていたように思えてしまいます。
あとで、ナジョンが、私たちお互いに気を使いすぎて素直になれなかった、とスレギにいうシーンがありますが、
兄妹のように育ったからこそ、恋愛対象として出会った二人とは違うお互いへの想いがあったってことですかね。
友情が愛情に変わるよりも、肉親の愛情が恋愛の感情に変わることのほうが難しいのかもしれません。
離れたら気持ちは変わるかと言えば、ヘテはエジョンにはずっと会えなかったわけですけど、
会う努力をして、再会できたら昔と同じように好きだということがわかりました。
待っている間、遠く離れている間も気持ちを変えずにいることができるということを、ヘテは証明してみせたわけですね。
会わないから、相手の変化を見ずに済む、久しぶりに会うから、変わらないところを見つけられるということもあるでしょう。
最初から男と女として出会った、サンチョンポとユンジンは、最初はお互いに受け入れがたいと思ったはずですが、日々一緒にいる中で、ものすごくわずかな隙間に、お互いを強烈に引き付けた瞬間に出会った。
はたからは、どうして一緒にいるんだろうと思えるような関係でも、壊れることなく続いて行きますね。
もうほんと、他人には理解できないものでつながっているとしか思えない。
いや、この辺、恋愛の描き方が深い。
そしてライバル・チルボンが再登場します。
しかも彼はアメリカにわたり、メジャーリーガーとしての地位を築き、マスコミが群がる超有名選手となって帰ってくる。
(性格的には相変わらず、奥手な感じですけど)
いやもうこれ、チルボン一択でしょ、とナジョンに言いたい。
でも結果的には、チルボンの存在は、ナジョンとスレギがやっぱりお互いが一番と再確認するためのものだったように思います。
チルボンは、メジャーリーグで20勝するくらいだから、強気の性格だと思うんですよ。それがどうしてナジョンに対してだけ、強気になれないのか。
自分の気持ちは強く認識しているけど、それ以上にナジョンの受け止め方を大事にしたことが、彼がナジョンにこっちを向かせることができなかった理由だと思いますが、
もし、ナジョンがチルボンを選んだとしたら、やっぱり理由はそこだったでしょうねえ。
1997版でも、シウォンに振られたお兄ちゃんには、最後に美人の女医さんをくっつけましたが、チルボンにもどうやらきれいな奥さんがいるようです。
肩と腰にけがをしていて、野球選手としてその後どうなったのかは気になりましたが、
チルボンは幸せにならなくちゃいけません。
チルボンの名前は、「キム・ソンジュン」でしたね。何度もユニフォームの背番号の上に名前が出そうになるのが、見えそうで見えなくてもどかしかったです。
このドラマ、つっこみたいところがたくさんあります。
2002年、ワールドカップで、韓国がベスト4になった年に、スレギとナジョンは結婚。
その数日前にヘテが下宿を出ることになって、「新村下宿」をたたむことになります。
普通、学生相手の下宿は卒業と同時に、また新入生が入ってきて入れ替わりが多いものですが、
この下宿は、最初の学生が社会人になってもずっと居座っていました。
彼らにとっては、もう自宅のような下宿だったのだと思いますが、
彼らがそこにいた8年間が一つの時代であったということですね。
ドラマは2013年に、ナジョンの引っ越し祝いまでを描いていますが、2002年から2013年までにどういうことがあったのかは詳しくはわかりません。
ヘテもピングレもチルボンも結婚し、みなそれぞれに家庭を持っているようです。
ナジョンの高級そうな新居は、実はチルボンの家で、
チルボンがアメリカに行っている間に借りているということがわかりました。
どうりで、チルボンは、他人の新居に来たような感じではありませんでした。
(そこがまた混乱の元)
私が意外だったのは、3人の子供がいるとはいえ、ナジョンが専業主婦に収まっていたこと。
スレギとはなれる決意をしてまで、オーストラはリアに行ったナジョンだから、ずっと働いているかなと思っていたんですが。
ナジョンの年の離れた弟、スクスク(BTOBのソンジェ)は、下宿では存在感が薄かったのですが、2013年には高校生になって登場しました。
彼に振り回される下宿生を描いていたら、話があと5話くらいいりそうです。
彼の名前は「ソン・ジュン」ですね。
下宿生の名前は、サンチョンポ以外は皆「ジュン」がつく名前なので、その「ジュン」にしたのかなと思いましたが、実はソン・ドンイルさんの実子と同じ名前です。
これもくすっと笑うとこなのかな。
とにかく、日本人にはちょっとやそっとじゃわからない「しかけ」がたくさんあるドラマで、ストーリー以外のそういうポイントを上げたらきりがないようです。
【作品メモ】
韓国放送:2013年10月~ tvN
演出:シン・ウォンホ/パク・ソンジェ 脚本:イ・ウジョン/イ・ソネ/キム・ランジュ
全21話