韓ドラとソウルホテルと。

韓国ドラマのレビューブログ(基本的にネタバレ)。ときどき昔話。

王は愛する

yoonaのココがみどころ!

■「王」は誰なのか!?

■気をもむ三角関係(ブロマンスがカギ)

■シワン君の演技が良いだけに、ストーリーが残念なところも。

 

 昨年、除隊したシワン君の、入隊直前のドラマです。

「ミセン」以後、オファーが殺到したと思うけど、

この王様役(ドラマでは世子だけど)は、これまでドラマや映画になったことがない、

高麗王朝第26代の忠宣王の役で、

誰かが演じた見本がないというのも新鮮だったのかも。

忠宣王は23歳で王位についているので、このドラマのウォンも21歳か22歳くらい。

彼が生まれるちょっと前が鎌倉時代文永の役、公安の役ですね。その時代。

 

いろんな王様がドラマになっていますが、

忠宣王がドラマにならなかったのは、なんとなくわかるような。

25代王が大陸を制していた元の王フビライの娘を王妃にしたことで、

この世子は史上初の混血なんですね。

血筋を重んじる民族にとって、それはちょっと触れたくないものがあるかなと。

真相はわかりません。王になってからあまり半島にいなくて、

ドラマになるようなストーリーもなかったからかも。

 

その「よくわからない」というところを逆手にとって、

「王は愛する」では大胆な三角関係を描いている。

世子が何年に生まれて、誰と結婚して、いつ王になったかとか、

それくらいしか従うものがないから。

 

美しく、賢い世子ウォン(イム・シワン)と、

王族の子弟であるワン・リン(ホン・ジョンヒョン)。

主君と家臣という間柄を越えて、二人は友として成長しましたた。

ウォンはリンを伴って堅苦しい王宮の外に飛び出し、民の暮らしを垣間見る。

ある日二人は偶然、盗賊が高麗一の豪商の妻の馬車を襲った現場を目撃。

盗賊はさらに黒ずくめの一群に襲われ、

豪商の妻は殺され、一人娘のサン(少女時代のユナ)と侍女のピヨン(パク・ジヒョン)が生き残る。

実は、リンの兄ジョン(ユン・ジョンフン)が豪商の財産を狙って企て、

自分が盗賊から娘を助けて婚姻を申し込むという策略によるものだった。

 

サンの父親ウン・ヨンベク(イ・ギヨン)は、娘が貢女として元に送られるのを避けるため、

顔に傷を負った侍女のピヨンを娘にしたて、サンを山にいる儒学者のイ・スンヒュ(オム・ヒョソプ)のもとに送って身を隠させた。

イ・スンヒュは王に進言を繰り返したためにうとまれ、隠遁生活を送っていたのだ。

 7年後、ウォン(ハンチョル)とリン(スイン)は、スンヒュに教えをこうため山に向かう。

そこで、武芸にたけた女サン(ソファ)に出会う。

 

ウォンとリンはソファにほぼひとめぼれですね。

でも、世子の態度のほうがあからさまなので、

主君の想い人をどうすることもできないリンは、自分の思いを封じ込める。

ドラマのタイトルは「王は愛する」だけど、その「王」は誰かと言えば、

素直に考えればワン・ウォンを指す。

が、王族であるリンも「王」姓なので、

これは最終的にどちらを指すのかというのはドラマを見ないとわからない。

 

3人の出会いのあと、ウォンの声で

「これは人を愛することを知った私の物語である」とかいうナレーションが入るので、

ウォン視点のドラマだと思ってしまいがちだけど、意外に深い意味を持ったタイトルです。

 

もう一つ言うと、このドラマは中国でも同時放送されたそうで、

そちらではウン・サンも豪商の娘ではなく「王族」ということになってたらしく、

彼女もまた「王」である、ということもできる。

王が誰を愛するのか、ということがいろんな方向に読めるというしかけもある上に、

ドラマの中で、誰の誰に対する愛が事態を動かすか、それが二転三転するので、

最後まで気をもみましたね~。

しかも、サンをめぐる三角関係だけじゃなく、ウォンとリンの間も主君と臣下の忠義、友情を越えたものがあって、そのブロマンスも含まれている。

日本版でタイトルが変わらなかったことが良かったです。

 

ウォンは元の皇帝(祖父)とその娘である母という強い後ろ盾を持っているので、

父親である忠烈王からは疎まれています。

ウォンは、母からも立派な王になるため厳しく育てられていて、

(母が息子だけを頼りにしなければならない事情も後でわかりますが)

王宮では味方のいない孤独な存在で、リンは唯一心を許せる友。

(史実では、ウォンはモンゴルで育てられている)

 

王の血統を高麗人に戻そうとするソン・イン(キム・ミンソク)は、リンの兄ジョンを担ぎ上げて、

高麗王よりも大きな財力を誇る豪商のウン・ヨンベクの娘と結婚させて、

王位を奪おうと画策します。

このソン・インってのが悪くて悪くて、誰の味方というでもなく、

状況によってころころ態度を変えて最後まで暗躍。

自分の愛人であり、医術を心得るオク・プヨン(後の無比)(チェ・スヒョン)を王様の下に送り、

怪しげな薬をつかって、王を意のままに動かそうとします。

余談だけど、「無比」という人は実在で、忠烈王の寵姫ということが歴史の本にも出てくるようで、ネットで検索しても出てきます。

リンは架空の人なのに(兄のジョンは実在)、この女が実在とは。

さらに関係ないけど、キム・ミンソクさんは、「ミセン」でカン・ハヌルの上司役をやってた人です。

 

どの韓国史劇もそうだけど、

何か動くと、敵味方双方の家臣(だいたい内官と侍女)が暗躍して、話をかき回す。

それぞれの主君に伝えることは間違ってはいないけれど、

それ、どうにでも解釈できるし、わりと余計なことだよね~と思うことも多い。

 

それに比べて、世子の護衛武士たちはどのドラマでも凛々しい。

世子の言うことだけに忠実に従い、強いし頼もしい。

護衛武士たちも、ウォンくらい世子が賢ければ、お仕えし甲斐がありそう。 

 

「王は愛する」は事前制作のため、後半、誰と誰がどうなるのかということは、

視聴者の意見には左右されていない。

途中までは、ウォンはどうにかしてサンを自分のそばに置くことになるのだろうと思えたのだが、事態が悪化してリンの家を救うために、リンの妹、ダン(パク・ファニ)を世子嬪に迎えると公言してから、話がややこしくなる。

ダンにそのことを告げる前に、ウォンはサンに「何があってもお前が一番」と言い聞かせるが、

正妻は正妻、でも一番好きな女も離さないっていう選択は、いかにも「王様」っぽい。

ダンもウォンが好きなので、ウォンから「妻に迎えるけど、想う人は他にいる」とか言われても涙ながらに従うことに。

このあたりから、それはアリなのか~、どっちか選べよ、と思えてくるし、

サンをひそかに思うリンとしても、それならサンは自分がもらおうと思ったに違いない。リンとしても、ウォンとサンのどちらを選ぶこともできなくなっていたんですね。

 

ウォンとリン以上に、どっちつかずだったのがサンの気持ち。

途中までは、ウォンにだいぶ傾いていたけれど、

いろいろな場面でリンに助けられるうちに、リンに傾いていく気持ちを隠せない。

ウォンが宮廷内の抗争に対峙しながら、なんとかサンを自分の下に置いておこうとするけれど、

山で自由に育ったサンもおとなしくウォンのそばにじっとしてはいないため、

どこかへ行ってしまうと、危ない目に遭い、リンが助けに行くことに。

それが最初はウォンのためだったけれど、リンもどんどん自分の意思でサンのもとへ行くようになります。

 

ウォンは、物語的には、最後はサンかリンを選ばなくちゃならなかったんだろうけど、

このドラマでは、結局二人を手放すことに。

二人がウォンのそばにいるという史実がないのだから、それはそうなる結末だったのだろう。

3人がばらばらに生きていくっていうのもアリかと思ったが、リンとサンは二人で生きていくことになる。

ヒロインと2番手がくっついて、ヒーローが一人残されるっていう結末は、

韓ドラの中では珍しいのではないだろうか。

 

リン役のホン・ジョンヒョンはどうしても前作の「麗」での、悪い兄役が記憶に残っていて、

最初はいつ裏切るんだろうとしか思えなかったけれど、

結局最後まで、サンのこと以外はウォンを裏切ることがなかった。

ウォンの護衛武士に追い詰められて、がけから落ちても、

「麗」を思い出して、またきっと生きてるんじゃ?と思っていたら、

本当に生きていてびっくりした!

 

生きていて驚くといえば、王様もサンも毒を盛られるけど、解毒剤で元に戻る。

王様が嗅いでいた煙はケシで、じわじわと追い詰められた。

サンはおそらく「ヒ素」を飲んだと思うけど、

日が暮れるまでに解毒剤を飲めば大丈夫っていうのが、いかにもドラマ。

 

後半、サンがどちらの男を選ぶのかがわからず、ちょっともやもやした展開が続き、

それがドラマの視聴率が意外と伸びなかった原因ともいわれている。

サンがウォンとリンをうまく利用しているようにも見える場面もあるし、

リンもサンも、自分がウォンのそばにいたら、ウォンが追いつめられることがわかっていたから、離れることを選んだと思う。

もしウォンがリンを殺して、サンを奪うことになったとしたら、

それはサンがウォンを許さなかっただろうし、逆でも同じだろう。

3人が3人ともそれぞれのことを想うという結末になったわけだが、

それでなんだかすっきりしない終わり方になって、視聴後感があまりよくない。

 

脚本は「砂時計」太王四神記」のソン・ジナですよね。

 

シワン君の演技はよかったのに、このすっきりしない終わり方は残念。

歴史では、王位についたウォンは、強引に世直しをやりすぎたためか、

すぐに王位をおろされ、その後、元に向かったそうです。

父王の死後、再び王位につくが、高麗に戻ることはなかったとか。

元で結婚もしたようですね。

そういう史実がある上では、仕方のない結末なのかもしれません。

 

リンとサンは、異国へ向かったと思われましたが、

高麗の南のほうにいるという風のうわさが聞こえてきて、

ウォンは二人がいる高麗にいたくはなかったのかもという想像もできます。

 

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あと、ケウォン(アン・セハ)とヨンボク(キム・ギョンジン)というとぼけた2人組が、最初から最後まで、掛け合い漫才のようないい味をだしていました。

 

このドラマはOSTもよかったです。

Amazon Primeで見ましたが、毎回最初にシワン君の歌う曲が入って。

 

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ロイ・キムの曲もよかった~。

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ロイ・キムとチャン・ジュニョンだなんて💦

まあ、曲に罪はない。

 

【作品メモ】

韓国放送:2017年9月~ MBC

演出:キム・サンヒョプ 脚本:ソン・ジナ

全40話(日本版は20話)